ありがとうございました。 ― 2017/11/17
アニメ『GS美神』でヒロイン美神令子の声を演じていただいた、鶴ひろみさんが急逝なさいました。数多くの人気作品でバリバリ活躍なさっていた方ですし、逝かれるにはまだ早すぎる年齢なので、ニュースが流れたときにはまさかという思いでした。
伝え聞く話では、高速道路で運転中の突然の発作だったにもかかわらず、ハザードをつけて停車させるところまでやってのけたそうです。小さい頃から自分の名前で仕事をしてきた生粋の役者さんらしい、責任感の強さだったように思います。
私は『ペリーヌ物語』のヒロインが大好きで、特にまだ初々しい鶴さんの声には萌え萌えでした。その後いろんな番組でお声を聴くようになり、声と芝居にどんどん力強さが加わっていく様子に「この人、素敵だなー」「いつか自分もギョーカイで働けるようになって、お会いできたりするかしら」と・・・まー熱狂的ではないけれど、フツーにキモい声優ファンですね(笑)。なので初めて自分が関わるアニメのキャスティング会議で、制作側が挙げてきた候補の中にお名前を発見したときはガッツポーズでしたよ。しかも美神令子は私が心血を注いで作った、とてもアレなキャラなわけで(笑)、そんなのを演らせ・・・もとい演じていただけるなんてもう、ものすごいしてやったり感(笑)。
一方、彼女の方は、キモい新人漫画家の小僧に「ファンです」とか言われて、「あーまたか」みたいな(笑)。当時の鶴さんはラブコメアニメの女王といってもいいくらい、たくさんのアニメでヒロインを演じてらしたため、若い男性ファンには役のイメージで見られることが多かったようです。なので、割と早いうちに「いや、キャラではなくご本人のファンとして、あなたにはぜひ、ウチのひどいヒロインを通じて、キモい男子を本音で粉砕する快感を味わっていただきたい」(意訳)とお伝えすることにより、警戒心を解いていただけたというか、想定以上にアレな原作者だと理解していただいたというか。そして思った通り、鶴さんに演じていただいたことで美神は、えげつない中にも愛嬌のある、原作を超えたチャーミングなキャラとして完成しました。
鶴さんの長く多彩なキャリアの中で、私と美神はほんの一年ちょっとのおつきあいです。なのですが、それまでは清純派ヒロイン役が多かった鶴さんに、クセの強い美神令子役はなかなか楽しんでいただけたようで(笑)、彼女が演じた多数の人気キャラたちに負けず劣らず思い入れていただいてたそうです。のちに絶チルにゲスト出演していただいたときに直接それをうかがって、ものすごく嬉しくて、この仕事やってて良かったなと思いましたね。
最後にメールをやりとりしたときは、高齢で体調を崩した大先輩のことをとても気遣ってらっしゃいました。その様子がなんかね、相変わらず初々しいというか。私も鶴さんもそれなりに歳を重ねたとはいえ、彼女の周りには大ベテランの先輩がたくさんいらして、その中では全然まだ若手なんだなーと。だもんで私も、鶴さんご自身がその世代になるまで、まだまだご縁は続くものだと思っていたのですが。
ペリーヌやドキンちゃんやブルマなど演じたキャラの裏話、役者仲間や先輩の逸話、子役時代のこと、いろんなお話をあの素敵な声でうかがえたことは、私の宝物です。このお仕事をしてくれて、たくさんのキャラに命を吹き込んでくれて、私のキャラを可愛がってくださって、本当にありがとうございました。
今はどうか、ゆっくりお休みください。