奈良県生駒市の市立中学校で2月、複数の男子生徒による女子生徒らへの盗撮行為が明るみに出た。男子生徒らは着替えの様子などをスマートフォンで撮影し、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で画像や動画を共有。被害を受けた女子生徒は十数人に上ったが、教員はおろか、盗み撮りされた生徒もまったく気づいていなかった。悪質な集団盗撮はなぜ発覚したのか。そこには、盗撮に加担していない生徒らの勇気ある告発があった。(田中一毅)
同校が集団盗撮を把握したのは2月7日。昨年11月以降、2年生の男子生徒5、6人がスマホやペン型小型カメラを使い、同級生ら十数人の女子生徒のスカート内や着替えの様子を教室などで複数回にわたって盗撮していたという。着替えの様子は教室内の棚の中にカメラを隠して撮影していた。
学校の聞き取りに対し、男子生徒らは「興味本位だった」と話す一方、一部は「(仲間に加わらないなど)自分だけ特別なことをすると(ラインの)グループを外されると思った」と釈明。盗み撮りした画像や動画のデータはグループ内で300~千円で売買しようとした形跡があり、生徒らはそれを元手に中古のスマホなどを購入する計画を立てていたともされる。
このままでは被害生徒が増え、行為がエスカレートする可能性もあったが、被害は意外な形で明るみに出た。
「同級の女子生徒がいじめられている気がする」。2月6日、クラブ活動を終えた女子生徒が教員にこう相談した。男子生徒らからみだらな言葉でからかわれているという。学校側はすぐに調査を開始したが、加害の特定には至らなかった。
翌7日、いじめを受けたとされる女子生徒と保護者が学校を訪れ、学校側が改めて事実確認をした結果、いじめと認定。関わった男子生徒3人を午前の授業中に呼び出し、別室で指導した。
3人の中には盗撮グループのメンバーもいたが、この時点で盗撮の事実は学校も被害生徒も把握していなかった。ところが、昼休みに事態は急転する。
「○○君が呼ばれたのはカメラのことですか? 僕たち知っていました」
職員室を訪れ、教員にこう尋ねたのはグループとは別の男子生徒3人だった。噂話や加害生徒が盗撮の相談をしている様子を見てうすうす気づき、呼び出されたのを見て「盗撮がバレたに違いない」と思ったという。
これをきっかけに学校側は事態を把握。盗撮に関与した生徒らから事情を聴き、経緯や被害実態を調べるとともに市教委に報告。保護者会でも説明した。市教委も記者会見を開いて可能な範囲で事実を公表した。
同校では年に2月と6月の2回、勉強以外の悩み事を打ち明けられるよう生徒と担任の2者面談を行っている。当時は面談期間中だったが、学校関係者は盗撮を明らかにした生徒らについて、「知っているのに面談で話すことができず、心に引っかかっていたのではないか。勇気がいったと思うが、よく話してくれた」と気持ちを代弁した。
盗撮発覚後、学校は奈良県警にも相談したが、今のところ学校での対処に任されている。加害生徒に対しては指導に加え、個別授業を受けさせるなどして対応。生徒らは反省しているという。また市教委からスクールカウンセラーを派遣してもらい、保護者が自由に授業や校内を見学できる自由参観も取り入れ、生徒のケアや信頼回復に努めている。