なかなか面白いデータで、高卒一年目の浅村栄斗と前田大和がOPSでほぼ同じである。つまり、打率(コンタクト能力)を追求するか、長打を追求するかで打撃結果に違いが出るという当たり前の話であり、もちろん才能や素質や努力によってその後の打者としての結果は異なってくる。しかし、高卒時点ではさほどOPSに違いは無いのが普通だと言えそうだ。高卒1年目の二軍成績でホームランを結構打ったという選手の数字を詳しく見ると、打率が低かったり三振率が高かったりして、それらを犠牲にした上でのホームラン数である。
なお、一流の打者になると打率も高くホームランも打つという選手が多くなるが、そういう選手は「当てる」のではなく「振り切る」打者である。イチローは「当てる」のに特化した選手だ。その水準があまりに高くなったので、化け物のような打率を残したのである。普通の一流打者は「振りきる」打撃を続けているうちに選球眼やコンタクト能力も高くなっていったわけだろう。体格に恵まれている選手なら、まずは三振を恐れず「振り切る」打撃を追求すべきだと言える。「当てる」打撃からホームランが生まれることはまず望めないからである。逆に、体格に恵まれない選手は「当てる」技術を追求すべきであって、ホームランなど望むと虻蜂取らずになる。ここで体格と言うのは、身長のことよりむしろ体重である。太れない体質の選手は長身でも長距離打者にはなれない可能性が高い。逆に門田のように身長が低くても肉厚の体型ならホームラン打者になることもある。言うまでもなく身長の高さは打者としてまったく有利ではない。ジャイアンツの長身選手が話題になっているが、あんな体型では長打者にはなれないと思う。
投手としては長身が有利であるのも当然で、同じ速さの腕の振りでも腕の長い投手のほうが腕の先(手の部分)の移動速度、つまりボールの推進力が大きくなるのは当然だ。つまり、長身投手の有利さは実は身長ではなく腕の長さにある、ということだ。これは物理的に当然の話だ。(身長2メートルで腕の長さが全長30センチメートルしかない奇形投手がどんな速さの球を投げられるか想像するといい。)しかしまた、リリース時に最大の力をボールに伝えきれるかどうかという点も問題で、腕の長さだけですべてが決まるわけではないが、まあ、基本的に低身長の投手は球の速さだけにこだわるべきではない、と言えるだろう。
高卒一年目二軍OPS.550~599の選手