野球評論家の西本聖氏が侍日本大学日本代表選考合宿をチェック。イチ押し投手に桜美林大・佐々木千隼投手(4年=日野、181センチ、83キロ、右投げ)を挙げた。
17日に平塚で行われた紅白戦。西本氏は佐々木がマウンドで投球練習を始めると「これは素晴らしい」と、わずか数球見ただけで能力の高さを見抜いた。
西本氏 下半身の強さと安定感が素晴らしい。無理をして力いっぱい投げている感じではないし、躍動感もない。それでも152キロが出た。力ではなくフォームで投げている。プロでもフォームで投げることができる投手は多くない。理想的な投げ方と言っていい。
佐々木は紅白戦で2回を投げ打者6人を完璧に抑えた。最速はこの日投げた投手ではトップの152キロをマーク。同じくドラフト1位候補の中京学院大・吉川内野手を148キロ直球で空振り三振に仕留めた。
サイドスローに近いスリークオーター。巨人のエースとして活躍し殿堂入りした「斎藤雅樹2世」という声も聞かれる。
西本氏 斎藤のような投手になれる可能性は十分ある。事実、スピードは上のわけだし。あとはもう少し良い意味での威圧感と「間」が欲しい。斎藤は左肩をグっと打者に向けることで腰を引かせていた。「間」を作る、1、2、3ではなく1、2の3にするには左足を胸のあたりまで上げることも一つの方法。軸足の右足で長く立つ時間が生まれ、足を降ろす時間も長くなる。「間」が取れれば打者はタイミングが取りづらくなる。スライダー、シュートといった横の揺さぶりが生きてくる。投手としての太い幹は出来上がっている。あとは枝葉を付けていくだけ。まだまだ伸びしろがある。
佐々木は2日後の19日に発表された侍メンバー24人に入った。先発陣の一角として期待されている。日米大学野球は7月12日に開幕する。
大学野球は春のシーズンを終え、最も大きな大会・大学選手権が終了。高校野球は、夏の予選が終了し甲子園を残すのみ。社会人野球も、最大の大会である都市対抗が終了したということで、2016年度のドラフト戦線の形が、大方ハッキリしてきたといえます。そこで今回は、ドラフト1位指名が予想される有力どころ12名を考えてゆきます。
(ドラフト戦線に異変)
2016年度のシーズンが始まるまでは、12球団が1位入札するのではないかとまで言われた 田中 正義(創価大)。しかし開幕戦でアピールした以外は、二回目の登板途中でリタイア。以後一度も投げることなく、春のシーズンを終えることになります。
元々他候補からは、頭一つ抜けた存在だった田中。しかし故障でのリタイアという不安要素に加え他候補の大幅な追い上げも見られ、一躍ドラフト戦線は混沌してきました。秋のシーズンでの復調ぶりにもよりますが、評価をどこまで取り戻せるのか注目したいところ。
田中 正義(創価大)投手 186/80 右/右
(新たな主役へ)
この田中以外で競合確実なのが、寺島 成輝(履正社)左腕。こちらは、順調にアピールでき、かつ昨年からの成長も感じさせる内容。大崩れしないまとまり、変化球レベル、力を入れて投げれば140キロ台後半を投げ込む力強さも兼備するなど、大学・社会人含めても、現時点では左腕NO.1の実力・素材ではないかと考えられます。それが先発型でかつ高校生であることを考えると、欲しいと思う球団は1球団だけだとは思えません。最低でも3球団ぐらいは、1位で競合するのではないかと考えています。
寺島 成輝(大阪・履正社)投手 182/83 左/左
(野手での一位は)
チームを日本一に導いた 吉川 尚輝(中京学院大)遊撃手が、最も1位指名に近い野手と言えるのではないのでしょうか。日本人離れしたダイナミックなプレーで魅了し、俊足、強打も全国レベルであることも証明済み。ポスト・鳥谷敬を探している 阪神 あたりが いの一番で入札してくる可能性を感じます。
吉川 尚輝(中京学院大)遊撃 175/73 右/左
(その他の1位指名候補は)
日米野球で、アメリカ相手に完璧なピッチングを魅せた 佐々木 千隼(桜美林大)右腕は、競合を避ける球団が単独1位指名を狙って獲りに来そうな逸材。スリークオーターから繰り出す150キロ近い速球に加え、今年に入りツーシーム・シンカー系のボールに磨きがかかりピッチングの幅を広げてきた。
また高校NO.1右腕の呼び声高い 藤平 尚真(横浜)右腕も、150キロ級の速球に加え曲がりの大きなスライダーを兼備し、1位指名の有力候補。甲子園での内容次第では、競合してでも欲しいという球団が出てきても不思議ではない。
また社会人NO.1投手であり、高校時代から注目されてきた 山岡 泰輔(20歳・東京ガス)右腕も、高校時代から定評のある投球術が健在で、更にパワーアップしてプロ入りを狙う。けしてスケール感あふれる素材ではないが、ローテーション投手の頭数を増やしたい球団にとっては、計算できる投球は魅力ではないのだろうか。
藤平 尚真(神奈川・横浜)投手 185/80 右/右
佐々木 千隼(桜美林大)投手 182/76 右/右
山岡 泰輔(2東京ガス)投手 172/66 右/左
(ハズレ1位候補)
個人的には、この6人が最初の入札の時に呼ばれる選手たちではないかと現時点では考えている。すなわち残り6人はハズレ1位という形で、外した球団が獲得に走りそうな選手たちについて考えてみたい。即戦力の期待や図抜けた素材は、この最初の入札でほぼ消えるといって良い。そのためその後の方針は、球団の考え方、またどの選手にどのぐらい入れ込んでいるかで変わって来る。 えぇ~、一位でこの選手いくの? という指名も、このハズレ1位ぐらいから増えて来るので予測は難しいし、昨年の 熊原 健人(仙台大-DeNA2位)投手のような、1位で指名されるだろうと思っていた選手が2位にまわることも珍しくはない。
昨年までの内容だったならば、最初の入札で1位指名されそうだったのが、生田目 翼(流通経済大)右腕。田中正義のライバルとして注目される存在だが、今年になってオープン戦含めて投げていない。ある意味、何処かが囲っているのではないかと勘ぐりたくなるぐらいの状況。秋に復調すれば1位指名の有力候補になるが、このまま秋も登板がないと、2位指名まで残っても不思議ではない。
そんななか計算できる即戦力として今年評価を上げてきたのが、柳 裕也(明治大)右腕。こちらは絶対的なスケールはないが、完成度の高い投球と強い精神力が自慢の好投手。開幕ローテーションを期待できる、数少ない一人と評価されるだろう。投手力に余裕があるチームはあまり好まない人材だが、頭数の足りない球団にとっては、ぜひおさえておきたい一人。
先発でもリリーフでもという使い勝手が良いのが、黒木 優太(立正大)右腕。こちらは身体は大きくないものの、150キロ前後のストレートと変化球のコンビネーションがさえ、球団によっては高い評価をなされても不思議ではない。個人的には2位タイプかと思っているが、ハズレ1位まで浮上しても不思議ではない。
大学NO.1左腕である 濱口 遥大(神奈川大)投手は、評価の別れる選手。150キロ級の厚みのあるボールとチェンジアップの威力は、間違いなく1位候補。ただしコントロールのアバウトさと、気持ちが乗り方で内容が変わって来るムラが激しいだけに、球団によって評価は別れるだろう。しかし爆発とした時の迫力は、今年の左腕ではNO.1。
春もう一つ結果を残せなかったが、畠 世周(近畿大)右腕の伸び代を秘めた素材だけに、秋のアピール次第ではハズレ1位候補にまで浮上してもおかしくない。ある程度の即戦力でありながら、上積みも秘めた魅力という意味では、昨年の 岡田 明丈(大商大-広島1位)投手にヒケをとらない。彼に足りないのは、全国大会などの太舞台でのアピール。これだけで5人埋まってしまったが、そのぐらい今年の大学生は充実しているし、その他選手も充実しているので、別の選手が浮上してくるかもしれない。
高校生では、島 孝明(東海大市原望洋)右腕などは、短いイニングでの爆発力という意味では、全国屈指の迫力の持ち主。特に外角低めに決まる速球は、プロでも手も出ないところにズバッと決めて来る。
また選抜では結果を残せなかったが、夏に向けて着実に照準を合わせてきた 高橋 昂也(花咲徳栄)左腕などは、寺島を外した球団が狙ってきそう。甲子園でのアピール次第では、単独入札に走る球団が出てくるかもしれない。
昨年のオコエ 瑠偉(関東一高-楽天1位)のように、ドラフトが近づくにつれ評価が上がって来るのが高校生野手。高校NO.1スラッガーの呼び声高い 細川 成也(茨城・明秀日立)外野や、高校球界屈指の強打の内野手・石垣 雅海(酒田南)遊撃手などが、これから日増しに評価をあげてくるかもしれない。
即戦力の宝庫・社会人球界は山岡以外地味な印象はあるが、ハズレ1位や2位あたりにまわりそうな実力者は多数いる。その中でも小林 慶祐(23歳・日本生命)右腕あたりは、手足の長い惚れ惚れするような体型とダイナミックなフォームでもあり、リリーフが欲しい球団を中心に人気を集めそうだ。
生田目 翼(流通経済大)投手 174/76 右/右
柳 裕也 (明治大)投手 180/80 右/右
黒木 優太(立正大)投手 178/75 右/左
濱口 遥大(神奈川大)投手 173/78 左/左
畠 世周(近畿大)投手 186/74 右/左
島 孝明(東海大望洋)投手 180/80 右/右
高橋 昂也(花咲徳栄)投手 179/81 左/左
細川 成也(明秀日立)外野 177/78 右/右
石垣 雅海(酒田南)遊撃 180/84 右/右
小林 慶祐(日本生命)投手 183/86 右/右
(最後に)
ハズレ1位候補は、予測が難しいだけに10人ほどあげさせて頂いた。ここであげた16人以外から、1位指名になり得る人材は現れるだろうか? 甲子園・大学秋のリーグ戦・社会人日本選手権予選などまで注視しながら、最終的なドラフト指名を固めてゆきたい。思わぬ掘り出しものを見つけるには、秋にまでその変化を見逃しては行けないので。