昨日のロッテの試合のスコアとソフトバンクのスコアを見ると、ロッテのほうがはるかに「いい野球」をしている。わずかなチャンスを見事に生かして接戦で勝つというのは、よほどチーム内に意思統一がされているということだろう。それは井口の監督としての力量だ。
一方、ソフトバンクは、前々から私がこのブログで書いているように、実は戦力差は他球団とほとんど無い。いや、楽天あたりのほうが今は戦力は上だろう。そして、チーム内に一体感が感じられない。その兆候は、柳田の「千賀が悪い」発言にあった。あれで、野手陣と投手陣に裂け目ができた、と私は見ている。野手のエラーでエースが失点して、それを「投手が悪い」と言われたら、投手としては頭に来て当然だろう。柳田の発言は若い野手をかばう意図があったのだと思うが、あの言い方は無い。千賀への憎悪すら感じる言い方である。「たかが育成上がりがエース面するな」という底意を感じると言ったら言い過ぎだろうか。
これは、柳田が「生涯ソフトバンクで選手生活を送る」意志を見せたことで、球団側が柳田を超特別扱いしているからだと思う。序列的に工藤監督より柳田が上になったと私は見る。
工藤監督が内川を二軍幽閉している理由も柳田への遠慮があるのではないか、と私は邪推している。柳田以上の「発言権」を持っているのは、キャリア的に内川しかいないのだから、同じベンチにそのふたりがいると厄介だ、というのが内川の二軍幽閉の意味ではないかという推測だ。もちろん、現在の実力から言ってどちらを選ぶかと言えば柳田であり、それは間違いではないが、私は今年のソフトバンクの迷走の原因は(今宮の離脱や松田の不振もあるが)柳田の存在にあるのではないかと思っている。つまり、「チーム内政治力学」の崩れである。
再度言うが、ソフトバンクは実はさほど戦力豊富ではない。それでいて、勝てば、戦力があるからと言われ、監督が評価されることがない。そんなチームで監督をやるのはよほどの監督報酬を貰わないと引き合わなだろう。
- 日本ハム対ロッテ 7回表ロッテ1死三塁、スクイズを決める藤岡(撮影・黒川智章)
<日本ハム1-2ロッテ>◇30日◇札幌ドーム
逆転優勝がかかる10月へ、アクセルを踏んだ。ロッテが3連勝で、ついに首位ソフトバンクとのゲーム差を「0」にした。
1-0の緊迫を打破したのは、今季19盗塁、スピードスターの和田康士朗外野手(21)だ。7回無死、代走で二塁走者になると、1死三塁から8番藤岡のスクイズで悠々、決勝点となるホームを踏んだ。
陰のヒーローは「ぼく、今日何もやってないですよ」と謙虚に笑い、報道陣の前に現れた。代走に出て、送りバント、スクイズ。「想定通りです」と振り返った。日本ハム・バーヘイゲンの左足が上がった瞬間、一気に右足に体重を移して加速。3秒強、15歩でホームを踏んだ。「もう余裕だなと思いました」とスライディングも避けた。
45日前が懐かしい。8月16日にプロ初スタメン。3安打3盗塁3得点で、バーヘイゲンを崩した。打撃の調子が上がらず、今は試合後半の代走や守備を任される。この日も好走塁と好守備で、タフな終盤にチームを白星に寄せた。「後半の守備はいつもきつい場面。しっかり守れる選手になりたいです」と話す。
チーム打率2割4分3厘は依然、12球団の12位だ。圧倒的な打撃力はない。井口監督も「正直、毎日同じメンバーで勝てるのが理想」と話しながら、チーム戦略部と連携し、打順や戦略を徹底して練る。「うちのチームの戦い方は、こうしないとまだ勝てないメンバーなので」。切り札の和田が一瞬で輝いての、今季18度目の1点差勝利。この方が案外、ロッテに勢いを生む。【金子真仁】