この人は、なかなかサブカルチャーにも詳しく、ユーモアがあるようだ。弁護士には珍しいのではないか。
(以下引用)
のび太とウルトラセブンが「職質」された・・・警察はどんな基準で職務質問するのか?
東京の秋葉原駅付近で「ウルトラセブン」が職務質問されていた――。そんな話題がネットで注目を集めた。もちろん、M78星雲からやってきた本物ではなく、ウルトラセブンの着ぐるみを着た地球人(のはず)だ。女性警官に職務質問されているウルトラセブンのシュールな姿が7月7日の七夕の夜、ツイッターなどで報告されたのだ。
6月には、名古屋駅付近で「のび太」のコスプレをした男性が職務質問を受ける様子が、やはりネットに投稿されて話題となった。お遊びのコスプレに対して真剣に対応する警察の様子はなんとなく滑稽だが、ネット上では「なんでコスプレ程度で職務質問されるの?」「悪いことしたわけじゃないのにかわいそう」といった疑問の声も多い。
はたして警察は、どのような基準で職務質問をしているのだろうか。街の中でコスプレをしていたら、職務質問をされてもしかたないのだろうか。福島隆弁護士に聞いた。
●職質にも「ルール」がある
「職務質問の要件は、警察官職務執行法2条1項に定められています。そこには、次のように書かれています。
『警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を…犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者…を停止させて質問することができる』
簡単に言えば、警察官がコスプレイヤーを見て、何らかの犯罪に関与するのではないかと合理的に判断したのならば、必要最小限度の職務質問をおこなうことができるということです」
つまり、いくら警察官でも、好き勝手に職務質問できるわけではないということだ。実際の運用はどうだろうか?
「実際の職務質問は、法律の文言よりは『気楽に』おこなわれているのが現状です。
本来、職務質問は任意捜査であるため、質問された側に『答える義務』はないとされています。
ただ、日本では職務質問を拒否される場合が少ないこともあり、職務質問を拒否すると、『拒否するなんて不審だ』として、しつこく質問されたり、警察署への同行を求めるようなケースもあるようです」
●「コスプレ=不審」ではない
コスプレで街を歩くことは「不審」なのだろうか?
「私個人としては、キャラクターのコスプレをして街を歩くだけのことが、犯罪と関連する不審事由にあたるとは言い難いと考えます。
もちろん、夏の暑い時期にウルトラセブンの格好をして歩くことは、他の人たちがしないという意味ならば、『異常な挙動』と言えなくもないですね。
さらに、そうした人が、突然『悪に満ちた社会に天誅を下す』などと言って騒ぎ始める可能性が、全くないとは言えません」
だが、コスプレをしていない人でも、騒ぎ出す可能性はあるだろう。
「そうですね。このようにして『異常な行動』『相当な理由』を広く考えるなら、職務質問の対象はどんどん広くなります。
事実上、拒否するのが難しいことを前提にすると、警察は慎重に職務質問を実施してもらいたいと考えます」
●今回の職質はやりすぎなのか?
すると、今回「ウルトラマン」や「のび太」におこなわれた職務質問は、やりすぎなのだろうか?
「現場の状況しだいですが、もし、ウルトラセブンやのび太のコスプレをした人が、大勢の群衆が集まる場所で、長時間にわたり人々の注目を集めていたのであれば、迷惑防止条例違反である『客引き』や、著作権侵害などといった犯罪の嫌疑があると考える余地はあるでしょう。
警察は、話を聞いたうえで『繁華街ではなく別のところでやってね』と、移動を促したのかもしれませんね」
たしかに、そう考える余地はありそうだ。
「念のために言っておきますと、警察は、ウルトラセブンものび太も、彼らのことを『本物』と考えて職務質問をしたわけではないようですね。
ウルトラセブンの『アイスラッガー』は、もし本物なら、銃刀法違反です。のび太も、凶器の宝庫である『四次元ポケット』を(なぜか)持っていたようです。にもかかわらず、警察官は、どちらにも関心を示さなかったようですからね」
福島弁護士はこのように断言していた。