ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です
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第四十三章 テーブル上の戦い
もはや勝敗は決していた。
残るグリセリード軍は、イルミナスの野の中央で泥に足を取られている千人そこそこだけであり、戦場にはグリセリード軍の屍が累々と横たわっていた。一つの戦闘で、一万人近くが死んだのは、この国の歴史始まって以来である。しかも、この戦闘でのアスカルファン軍側の死傷者は、千人にもならなかった。そのほとんどは、アドルフ大公の裏切りによるものであり、それがなければ、被害はずっと少なかっただろう。
戦場から逃走した兵士たちに取り残された者たちは、とうとうアスカルファンに降伏した。捕虜の数は、負傷者を含めて二千五百人ほどであり、この捕虜の数も記録的なものである。
バルミアに引き上げる国王軍とレント軍を、市民たちは、歓呼の声で迎えた。
帰還した軍の兵士の中にマルスを見つけたジーナは、駆け寄ろうとして、足を止めた。先に一人の美しい少女がマルスに駆け寄って抱きつき、マルスと祝福を交わしていたからである。
群集の中にジーナを見つけたマルスは、その側に急ぎ足で近づいた。
「ジーナ、無事だったんだね。お父さんやお母さんも無事かい」
「ええ。マルス、その方は?」
「オズモンドの妹のマチルダだ」
オズモンドも近づいてきて、ジーナに挨拶した。
マチルダとジーナは、一瞬互いを値踏みするように見たが、ジーナはマルスへの淡い思いを忘れようと、この瞬間に決心した。それは、マチルダの目の中にあるマルスへの強い愛情を認めたからであった。
「マチルダさん。初めまして。ジーナと言います」
「知ってますわ。マルスがお世話になった方ですよね」
「いいえ、こっちの方がマルスには世話になったのですわ。命の恩人なんです」
「その話は聞いてないな。まあ、道で立ち話もなんだ。皆、僕の家に行って、積もる話をゆっくりしようじゃないか」
オズモンドが話に割り込み、全員でローラン家に行くことになった。
その夜は、トリスターナやジョンも含めて、長い旅の話や戦争の話に花が咲き、戦の疲れも忘れ、夜が明けるまでマルスたちは笑ったり騒いだりして語り明かしたのであった。
一方、シャルル国王の宮廷でも祝勝会が開かれ、アンドレはレント代表としてそれに出席しなければならなかった。
その席上では早くも老練な貴族たちによって、戦の論功行賞の根回しが行われていたのである。貴族同士の仲間ぼめで、戦で大した働きもしていない誰それの働きが大げさに論じられ、マルスらの名前は少しも出てこなかった。
アンドレは業を煮やして、国王に向かって、今回の戦の一番の働きは、イルミナスの戦いの前に、敵に夜襲をかけて、敵の矢を燃やして敵の戦力を減らし、更に、アドルフ大公の裏切りで窮地に陥った国王軍を敵への奇襲で救ったマルスだ、と言ったが、王は
「しかし、マルスとやらは貴族ではないからなあ。貴族でないものを武勲第一にするわけにはいかんのだよ」
と言うだけであった。
アンドレはあまりの情けなさに涙がでそうなほどであった。
こんな連中のために、俺たちは命を賭けて戦ったのか……。
アンドレはこの不潔な連中と同席するのも嫌になって、無礼を承知で退席し、そのままローラン家に向かった。
アンドレと共に祝勝会に出ていたオーエンも彼に着いてきた。
「これからどうします、アンドレ」
「マルスたちの顔を見て、しばらく一休みしてから、一度レントに戻り、アルカードに帰ろう。グリセリード軍を破った今なら、スオミラの町をグリセリードから救えるかもしれない。レント国王が兵を貸してくれたらだが」
「そうですね。やっぱり俺たちにはスオミラが一番だ」
オーエンは嬉しそうに言った。
ローラン家に入ったアンドレは、そこにトリスターナがいるのを見ると、やにわにその手を握り、
「トリスターナさん、結婚してください」
と言った。
周囲の者たちはあきれ顔でそれを見ていた。
「あの、アンドレさん。これは何かのご冗談でしょうか」
トリスターナはぼうっとした顔で言った。
「いいえ、冗談ではありません。先ほどまで、獣たちの中にいたもので、今、美しく清らかなあなたを見て逆上したのですが、本気です。どうか僕と結婚してください」
「ちょっと待った」
オズモンドが二人の間に割って入った。
「この結婚は、トリスターナさんの後見人である僕が許さん」
「いつ君が彼女の後見人になった」
「彼女はこの屋敷で預かっている以上、僕が後見人だ。後見人として言わせてもらえば、彼女と結婚するには、少なくとも百万リム以上の資産を持ってないと駄目だ、彼女に貧しい不幸な暮らしをさせるわけにはいかん」
それくらいの金はある、と言いかけてアンドレは口をつぐんだ。アルカードはグリセリードに占領されており、今の彼は無一文同然なのであった。
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