(※この文章は『リコリス・リコイル』のネタバレを含んでいるので読みたくない人は回れ右をしてください)
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はてな匿名ダイアリーに、アニメ『リコリス・リコイル』(以下、『リコリコ』)の気味悪さを指摘する文章が書かれていた。気持ち悪い・鼻につく、等々と書かれているので批判的な言及として受け取っていいのだろう。
でも私は、ここで批判的に書かれているところが嫌いになれない。その鼻につく成分が、都合良くデフォルメされた『リコリコ』の世界に添えられたリアリスティックな薬味になっていると感じられるからだ。
「大人による無自覚な搾取構造」というリアリティ
上掲のはてな匿名ダイアリーでは、
前線の少女と銃後の大人という構造からガンスリ(とかエヴァとかあのへん)の亜種として良いと思うが、それら先行作品と比べたとき、リコリスが少女のみで構成される理由(※)や、少女を前線に立たせる搾取構造に対する大人側の自覚とか罪悪感がすっぽり抜け落ちていてさすがに気味が悪い。
と記されている。
この気味悪さには共感をおぼえるし、リコリスの犠牲や献身のもと、平然と・無自覚に成り立っている穏やかな社会を気味悪く思った視聴者は(程度の差はあれ)多いんじゃないだろうか。
じゃあ、それが作品の面白さを毀損するかといったら……私の場合、面白さを毀損するというより、面白さにアクセントを与えていると感じる。ゆるふわ百合ガンアクション作品に付け足された一種のスパイス、薬味のたぐいで、それが効いているとも感じる。
私にとって、この『リコリコ』の薬味の加減がめちゃくちゃ好みで、一話を観たとたん、すっかりやられてしまった。もっと薬味がきついほうがいいという人もいれば、薬味なんて入れずにもっと砂糖マシマシにしろ、ゆるふわ百合アクションに徹しろって期待する人もいるだろう。人それぞれの好き好きがあるのだから、それは仕方ない。私は自分好みの味付けの作品がここまで作り込まれている幸運に感謝して、最後まで視聴するのみだ。
無自覚な大人たちによる、若者たちの搾取と犠牲、その描写。
それが戦場ではなく穏やかで秩序ある社会で、人知れず起こっているということ。
リコリスたちが搾取されるべく育てられ、実際搾取されてバタバタ死んでいるこの世界観って、今の日本社会の直喩にはなっていないけれども、暗喩としてはいい塩梅のように私にはみえる。