「打たれるのはいいんです。たとえ、それがホームランであってもです。最悪は、無駄な四球の後の2ランですよ。守っている野手のリズムも、試合の流れも悪くしてしまう。」
という言葉も、まさに我が意を得たり、である。毎度言うが、ホームランを打たれても、相手打者のファンを喜ばすのだから、悪くはない。その打席では負けても、勝負どころで勝って、試合に勝てばいいのである。それが投手の務めだ。どんなへぼ打者でも5打席に1回くらいのヒットは打つのだから、毎試合ノーヒットノーランができるわけはない。1試合に10安打以下に抑え、3点以下に抑えたら、優秀な投手だと言える。まあ、昨年の田中将大のような24勝無敗、防御率1点台という記録は空前で、かつ、絶後になるだろう。普通のエースは、15勝10敗、防御率2.50乃至3.00くらいで十分にエースとしての働きをしたと言える。
ところで藤浪だが、今年の不成績は初年度にあの働きができたことで「プロを舐めてしまった」ことによるものだろうが、一度狂った歯車を元に戻せるかどうかが、このまま平凡な投手に成り下がるか、一流投手になれるかの分かれ道だろう。後者になるには練習と、自覚しかない。その自覚とは、昨日書いた上原のような心構えを持つことである。
能見が次代のエースに激言「藤浪は去年より悪くなっている」
東スポWeb 3月23日(日)11時0分配信
楊枝秀基のワッショイ!!スポーツ見聞録 【阪神・能見篤史投手(34)】
2005年以来9年ぶりのリーグ優勝を目指す阪神。3・28巨人戦の開幕投手を務めるのは能見篤史(34)だ。2年ぶり3度目となる大役を任された虎のエース。この10年目左腕をスポーツライターの楊枝秀基氏(40)が直撃した。投球へのこだわり、今季中に取得するFA権。そして、次代のエースとして大きな期待を寄せる藤浪晋太郎(19)へのメッセージ――。クールなエースが思いのたけを激白した。
――次回が本番前最後の登板となる
能見:調子はまずまずですね。次がオープン戦最後になるけど、基本的にやることは変わらない。ただ、いろいろなことを確認しながら投げたいと思います。今度は打席にも立つので、その準備とかも含めてですね。
――相変わらずどんな状況でもマウンド上では落ち着いている
能見:いろんな考え方があると思うんですが、僕自身が重点を置いているのは四球を出さないことです。無駄な四球がいかに失点につながるかということは分かっている。打者が手を出してきやすいからといって、単純にストライクからボールになるフォークという選択をしたくない。
――3ボール2ストライクのフルカウントでも
能見:僕はフルカウントでは直球に重点を置いています。もちろん、フォークも選択するのですが、ストライクゾーンの枠からは外したくない。「とりあえず」のフォークで四球を出すということにだけはならないように心掛けてます。ゾーンぎりぎりを使って変化させる感じですかね。
――ストライクゾーンで勝負となると打者としては的を絞りやすくなる
能見 打たれるのはいいんです。たとえ、それがホームランであってもです。最悪は、無駄な四球の後の2ランですよ。守っている野手のリズムも、試合の流れも悪くしてしまう。
――今季は若手へのアドバイスなどチーム全体への目配りが目立つ
能見:教えるとか指導するということではないです。僕なりに気になった点とか、こうしたらこうなるんじゃないかなという、あくまで「提案」という感覚ですね。
――特に気になった選手は
能見:春季キャンプでは鶴に声をかけましたね。投球練習の映像を見て、思っていることを言いました。「躍動感がない」と…。少し体が開くところがあったので本人に伝えました。少しは良くなっているとは思いますよ。
――2年目の藤浪については
能見:表現としては良くないかもしれないけど、僕は去年より「悪くなっている」と思います。
――えっ!? 周囲の評価は上々だけど…
能見:プロとして1年間やったという余裕があると思うんです。でも、それは悪く言うと、なめるわけではないですけど「プロに慣れてしまった20歳」というふうになってしまう可能性もある。余裕を持つのはいいことですけど、未知の能力をまだまだ持っているでしょうし、実力のある選手ですからね。
――藤浪に求めることは
能見:去年、1年目で先発ローテーションをしっかり守ったことは立派です。ただ、規定投球回数には届いていない。年間170イニングから180イニングを継続して投げるしんどさ、続ける大切さを知っていってほしいです。これは、それぞれの投手によるところもあるんですけど、藤浪のキャンプ中の投球数も多くはなかったと思います。これは当てはまるかどうか分かりませんが、マー君(ヤンキース・田中)もブルペンではそんなに多く投げない。今はあそこまでになりましたけど、2年目(9勝)は1年目(11勝)より成績が良くなかったでしょ。実際にどうなるかは分かりませんけどね。
――期待しているからこその言葉
能見:フフッ まあ、30代の僕と同じランニング量だったとしたらおかしいですよね。もっと走れ! 知らん間に(手を)抜くことを覚えてますからね(笑い)。そういえばランディ(メッセンジャー)にも「お前はそのままでは普通の投手になってしまうぞ」って言われてました。これは本人がどう感じて練習に取り組んでいくかにかかっています。
――チームにとっても藤浪の活躍が欠かせない
能見:そうですね。そのためには周りがもっと力を貸してあげないと…。打たれても、打って返してやるとか、みんなでカバーして負けさせてはいけない。まだまだ伸びるんですから、勝たせることでサポートして成長させないといけない。
――ところで、順調なら今季中に国内FA権を取得する
能見:年齢のこともあるし…(笑い)。僕は阪神に入ろうと思って(自由枠で)入団した。前から言ってますけど、他のチームでプレーしたいとか、そういう考えはないですね。メジャーも興味ないです。
☆ようじ・ひでき=1973年、神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」でプロ野球担当記者として活躍。巨人、ヤクルト、西武、近鉄、阪神、オリックス担当を歴任。2009年にはWBC取材班キャップとして2大会連続世界一を体感した。13年10月独立。ライター離れしたファッションセンスとトーク力で取材を展開。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持ち個性派路線を貫く。12月からアメーバブログ「楊枝秀基のワッショイ!! スポーツ見聞録」を開設した。