私は落合ファンの一人ではあるが、今回の「解任」はむしろ落合にも中日球団にもいいことだと思う。落合野球は、「勝つ野球」であって、「面白い野球」ではない。これは、あのV9の川上監督も常に批判され、悩まされたことである。川上に限らず、森にせよ広岡にせよ上田にせよ、あらゆる「常勝監督」は「あの監督の率いるチームは強いけど、野球が面白くない」と言われたものである。
しかし、実際、「強い野球」と「面白い野球」は異なる。落合の場合、それを象徴するのが例の「日本シリーズでの完全試合目前の投手降板」だろう。勝つ確率を考えれば、あの降板は当然だ。8回まで投げて疲労している先発投手より、準備万端整って出番を待っていたベテラン救援投手の方が1イニングを抑える可能性は高い。しかし、その決断によって、野球ファンは、大リーグ史上にも一度しかない「ワールドシリーズでの完全試合」に相当する歴史的快挙を目にする可能性を奪われたのである。
落合が守備力と投手力重視のチーム作りをしてきた結果、中日というチームは「安定した成績を残すが、見ていて面白くない野球をする」チームになった。ファン動員数減少がずっと続いていたのも当然である。ファンが見たいのは1対0の投手戦ではなく、8対7くらいの逆転に次ぐ逆転の試合なのである。
というわけで、落合は素晴らしい監督だが、中日には合わない。横浜の立て直しのために、横浜が彼を招聘することを期待したい。
(以下引用)
落合監督“解任” 観客減、外部コーチ登用で球団と溝
<中・ヤ>試合前の練習を見守る落合監督 Photo By スポニチ |
中日は22日、落合博満監督(57)の今季限りでの退任とともに、来季監督としてOB会長の高木守道氏(70)の就任を発表した。
落合監督は3年契約の3年目。チームが現在2位で、優勝争いの真っただ中の異例の発表となった。昨年まで3度リーグ制覇するなど手腕を発揮する一方、現場主導の人事や指導者育成などで球団とは溝があり事実上の「解任」となった。
何から何まで異例の退任発表だった。ナゴヤドーム内の会見場。落合監督に打診したところ断られ、佐藤良平球団代表だけ会見に臨んだ。
「落合監督の残された成績は輝かしいが、判断の一つは一度、新しい風を入れたいということです」。シーズン途中での発表をこう説明したのは、首位ヤクルトとの対戦の3時間前のことだ。白井文吾オーナーも「電光石火のごとく、唐突な印象を与えるかもしれない」と感想を口にした。
背景にあるのが観客動員の減少、そして球団方針との溝だった。「勝つことが最大のファンサービス」と公言し、昨年まですべてAクラス。だが、成績と反比例して観客動員は伸び悩んだ。6日には巨人戦ワーストの2万3441人。さらに白井オーナーから全権委任されたコーチ人事では中日OB以外のコーチを積極的に登用した。
森繁和ヘッドコーチを筆頭に自分の考え方を熟知する人材を集め、上田佳範打撃・外野守備走塁コーチらは選手で獲得して引退後そのままコーチに。OB優先の球団の反発を買った。また落合監督も、親会社の中日新聞に掲載していた自らのコラムをこのほど突然終了するなど、両者の「距離」は広がる一方だった。
球団史上最長の就任8年目にユニホームを脱ぐ落合監督だが、後任の高木氏は70歳。「新しい風」という球団の説明とは裏腹に「つなぎ」感は否めず、短期政権とならざるを得ない。
◆落合 博満(おちあい・ひろみつ)1953年(昭28)12月9日、秋田県生まれの57歳。秋田工から東洋大入学も中退。東芝府中を経て78年ドラフト3位でロッテ入団。87年に中日に移籍して、日本人初の1億円プレーヤーに。FAで94年に巨人、97年に日本ハムと渡り歩き98年現役引退。82、85、86年と3度の3冠王を含む、首位打者、本塁打王、打点王をそれぞれ5度獲得。04年に中日監督に就任。3度のセ・リーグ制覇を果たし、07年には日本シリーズ優勝。今年1月14日に野球殿堂入り。家族は信子夫人(67)、長男・福嗣さん(24)。