下で森が言っていることもすべて正論である。
こういう発言を現在の巨人ファンは老害などと言ったりする。だからダメなのだ。
(以下引用)
テレビや新聞でプロ野球の様子もつぶさにチェック。V9捕手は、3年連続V逸の古巣・巨人の現状をどう見ているのだろうか。
「ちょっとひどすぎるな。(昨年の)4位なんて、チーム全体が屈辱的だと、危機的だという意識を持たないと。投手だって決して悪くない。十分、勝てる戦力ですよ。もどかしい」
チームとして、目指す野球を明確に打ち出す必要性を指摘する。
「一番いい例が去年の西武。辻が監督になって、ものすごく多かった失策を減らして、機動力を使って結果を残していった。本塁打が出やすい球場だからと、偶発的なものに頼っていては勝てない。まずは投手、守り。足を絡ませるとか、点の取り方はいくらでもある。首脳陣がどういう戦い方をしていくかポリシーを持って、選手に理解させていかないと」
捕手出身だけに、やはり、小林を中心としたバッテリーに注文は厳しくなる。
「もっと相手を知ることが大事だな。(結果を見ると)同じ打者に同じように打たれているケースが非常に多い。例えば、広島にいい戦いをしているチームのバッテリーが、どう打者を攻略しているか、追究していかないと。と同時に、自軍投手の特徴もしっかりつかむこと。投手の調子が悪い時にどうするかが本当の捕手だ。それを指導するのはコーチの役目。もっと勉強しないと。捕手なんて、やることはいっぱいある」
黄金時代の西武は、選手個々が大人の集団だった。
「僕は、あれやこれやと言わなかった。コーチが僕の考える野球をよく理解して、選手に浸透させてくれた。大事なところでバントミスした選手は、黙っていても1人で室内練習場に行って練習していた。ボーンヘッドがあったら、選手同士が『何やってんだ』『そんな当たり前のことができないのか』と。それが勝利に対する執着だよな。そういう空気があった。確かに強かった。いいチームだったな」
“意識改革”を望む。
「僕が西武でよく言っていたのは『1本の本塁打より1本の犠打』。ひとつの犠打が勝敗を分ける。それは地味な仕事かもしれないけども、偶発的な本塁打よりも戦況を良くしていく。日本シリーズで巨人相手にああいう走塁【注】をやったり、みんながそういう野球をやることを楽しんでいたというかな。巨人の選手が、どこまでそういうものに対して関心を持つか。『そんなの分かってる』なんて言うようじゃ、いつまでたってもアカンわな。僕は毎年、1つのポジションをいろんな選手で争わせていた。FAで選手を獲るのもいいが、育てていくことも、もう少し考える必要があるんじゃないかな」(取材・田中 俊光)
【注】西武と巨人が対戦した1987年の日本シリーズ第6戦。2―1の8回2死、西武・秋山の中前安打で一塁走者の辻は一気に生還。巨人中堅手・クロマティの緩慢な動きを突く好走塁を見せ、リードを広げた。そのまま西武は逃げ切り、4勝2敗で2年連続7度目の日本一に輝いた。
◆森 祇晶(もり・まさあき)1937年1月9日、大阪・豊中市生まれ。81歳。55年に岐阜高から巨人に入団。5年目に頭角を現し、捕手としてV9に貢献。61年から8年連続ベストナイン。74年引退。球宴出場11回。ヤクルト、西武のコーチを経て、86年に西武監督に就任。パ・リーグ史上初の5連覇(90~94年)を含むリーグ優勝8度、日本一6度に導き、94年限りで退団。2001、02年横浜(現DeNA)監督。05年に野球殿堂入り。選手としての通算成績は1884試合、打率2割3分6厘(5686打数1341安打)、81本塁打、582打点。監督通算成績は785勝583敗68分け、勝率5割7分4厘。