野球というものは、見るほうも、「見る経験」を積めば積むほど面白くなる。知れば知るほど面白くなる。一生ものの最高の娯楽である。記事を読む楽しさもあるが、それには野球をちゃんと知っている記者がいないといけない。
下の記事のラミレスの言葉も面白い。まあ、結局は彼の持論の「内角を突け」を左投手と右打者の場合に限定して言っているだけだが、その見方は正しいと思うし、それが正しいことはこのCSで実証されたとも言える。
打者の内角を突け、と言うことは易しいが、実際にそれができる投手は少ない。要するに、高度な制球力と勇気が必要だ、ということだ。あの、内角打ちが得意で、絶好調だった坂本が、内角球で三振をくらった場面は、今回の「見ることの素人には分からない」クライマックスだったのではないか。
DeNA・ラミレス監督は巨人の弱点を見抜いていた
サンケイスポーツ 10月11日(火)15時0分配信
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【球界ここだけの話】
ラミレス、いやラミちゃんは世間が考えているより、ずっと賢く、きれる男だ。2008年に巨人に加入し、取材するようになってから、その観察眼には何度も驚かされることがあった。今でも、DeNAと対戦することがあれば、練習中にサムアップポーズで「元気?」と合図を送ってくれる。
クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージも終わった今だから、紹介できる話がある。9月23日。東京ドームでの試合前に会話をする機会があった。「今年の巨人打線をどう見ている?」と聞くと、「うん、マークをしないといけないのは坂本。今の巨人で左投手の(右打者の)内角に食い込むクロスファイアをさばけるのはハヤトだけだね。セ・リーグを見渡してもそう多くはいないけど、そこに投げ込むことができる投手は、十分に通用すると思うよ」と明確に答えてくれた。
「じゃあ、ベイスターズで、それができる投手は?」という質問には、「石田と今永だ。石田は本当にクレバーだよ。自分で配球を組み立てることができる。コントロールもうちの投手陣で一番いい。今永はハートが強いね。内角をどんどん突ける。相手を押し込むストレートもあるしね」。CSで先発した2人の左腕を絶賛していた。
ラミちゃんの言葉を頭の片隅に置きながら、ファーストステージ3試合を球場で見ていたら、“なるほど”と思った。今永、石田だけでなく、リリーフの田中、砂田らDeNAの左腕は、いずれもクロスファイアで臆することなく右打者の懐を攻め、左打者には粘り強く、外角の出し入れで勝負していた。
一歩間違えれば痛打を食らう“もろ刃の剣”ともいえる内角攻めだが、捕手・戸柱も徐々に手応えを得たのであろう。第3戦は、絶好調の坂本も内角直球で見逃し三振に抑えた。
巨人もCS前練習で、2軍から今村やD7位・中川(東海大)を呼び、打撃練習で左腕対策を施したが、3試合で計8得点、打率・190に封じ込まれたことを考えると、DeNAバッテリーの勝利だった。
巨人時代のラミレス選手はパワーと打撃技術だけでなく、高い分析力でチームを支えていた。「僕はね、相手の投手のことよりも相手捕手の攻め方を研究するんだ。(阪神)矢野さん、(中日)谷繁さんとの駆け引きは本当に面白い」。日本選手以上に日本選手を研究し、今の地位を築いた。恐るべし、ラミレス監督。独走でセ・リーグを制した広島とのファイナルステージは12日に開幕する。どんな戦いになるか、楽しみだ。(桜木理)