ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です
管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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「ベースボールジャーナル」というサイトから転載。
長い記事だが、好記事である。
「滑るボール、固いマウンド」ダルビッシュの、日本時代からは考えられないあのひどい防御率の原因は、これがすべてだろう。
しかし、マダックスの「いくらファーボールを出してもかまわない。打たれるな」というアドバイスは驚いた。言ったのが、あのマダックスだけに。だが、これは「人を見て法を説け」の実例であり、普通の投手には彼もそうは言わないだろう。
(以下引用)
NHKスペシャル「ダルビッシュ有 大リーグと闘った男」を見て
Splash Hits 2012年11月10日09時23分
.
元記事はこちら
NHKスペシャル | ダルビッシュ有 大リーグと闘った男
今月4日に放送された表題の番組、ご覧になられた方も多いかと思う。NHKの取材班がダルビッシュのルーキーシーズンに密着し、3月(開幕前)、7月(オールスター前)、10月(シーズン終了後)と3度の独占インタビューを行いその内容を編集した特別番組だ。
番組冒頭のナレーションにもある通り、普段は決して多くを語らないダルビッシュだが、番組ではメジャーリーグでのルーキーシーズンを苦しみながらも戦い抜いたダルビッシュの苦悩や葛藤、そして成長が描かれていた。ダルビッシュ本人も自身のTwitterで番組をPRしていたくらいなので、本人にとっても納得のいく(嘘がない)内容になっているのだろう(ダルビッシュは一部の新聞社を「作り話を書く」と度々批判している)。
ダルビッシュ有(Yu Darvish)✔
@faridyu
NHKスペシャル ダルビッシュ有 大リーグと闘った男 今夜9:00〜9:49 よろしくお願いします!
2012 11月 4 返信
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番組は、ダルビッシュが先発試合に毎回行う"ルーティーン”を語るところからはじまる。ダルビッシュはナイトゲームでの登板日、18:25頃にクラブハウスで必ず1曲、ヘッドフォンで音楽を聴いてからフィールドに向かっていたそうだ。「ラブソングが好き。"アガル系"の曲はあまり好きではない」らしい。
そしてレンジャーズのシーズン終了後、プレスボックスから誰もいないフィールドを眺め「苦しんだマウンドでもあるけど、自分を成長させてくれたマウンドでもあるので…1年で凄く思い入れは強くなりましたね」としみじみ語るスーツ姿のダルビッシュ。ラストゲームから僅か5日後でありながら「大分前のことのよう」というダルビッシュの言葉には、彼がいかにシーズンをもがき苦しみ必死に戦い抜いたかが伺える。
番組ではダルビッシュの今シーズンを時系列で振り返りながら、本人のインタビュー交えダルビッシュの心境、意識がシーズン中どのように変化していったのかに焦点があてられていた。滑るボールや固いマウンドに「競技自体が違う」とまで感じた苦しみや「自分で戦っている状況なので相手と戦える状況ではない」ことへの苛立ち、そして野球人生で初めて陥った精神的な"スランプ"、その先に掴んだ"成長"。
こうしたダルビッシュの苦しみの多くはシーズン中からメディアで語られていたものだったが、番組内でダルビッシュの口から語られた言葉には、新たな発見と驚きがあった。
「技術ではなく力」の勝負に拘っていたダルビッシュ
番組で終始強調されていたのが、ダルビッシュが胸に秘める"力勝負"への拘りだ。野球において"力勝負"というと、ピッチャーなら小細工なしの速球をガンガン投げ込むというイメージだが、意外にもダルビッシュはまさしくそんな"速球勝負"で打者を圧倒したいという思いを強く持っていたようだ。
シーズン開幕前に行われたインタビューでダルビッシュは、その思いを既に口にしていた。「日本は技術技術だから」「技術だけで結果を残しても(日本人投手の評価は)上がらないと思う」「(技術ではなくて)パワーでも勝たないといけない」。シーズン中のインタビューでも「日本人はパワーで勝負できないと思われているところがあるので、それは見せておくべきところかなとは思っている」と語っている。
ダルビッシュがこうした"力勝負"への拘りを強く持っていたことは、個人的に意外だった。というのも、ダルビッシュの口からファストボールのスピードや威力に対する拘りなどをあまり聞いた記憶がなかったからだ。レンジャーズの入団会見時には「自分は変化球投手」と話し、その話し振りからは"速球"に特別拘りがあるようには感じられなかったし、またダルビッシュは以前に理想のピッチングを「27球で完全試合」と口にしていたこともあったと記憶している。番組でも自身の強みについて「試合ごとに全く違うピッチャーになれること」と断言していた。
それだけに、ダルビッシュが今年これ程までに"力勝負"に拘りを持っていたことには驚かされた。先述の通り、メジャーリーグに臨む心境をダルビッシュは「パワーで勝負できるところを見せたい」と語り、またある登板日の試合後、日本人記者から奪三振の多さについて言及されるも「まあ、変化球で逃げ回っていれば(三振は)取れるんじゃないですか」と、自嘲的な半笑いで答える姿は衝撃的でさえあった。今年7月に「(前半戦について)結果は良いですけど、評価に値しない。なかったことになっている」と断言したダルビッシュは、明らかに"結果"以外のもの、すなわち自分が理想とする"力勝負"を追い求めていた。
ダルビッシュは"力勝負"に拘っているといっても、決してスピードガンコンテストをしているわけではない。そうではなくてダルビッシュが抱えているのは、並いる強打者たちを「パワーで圧倒したい」という思いだ。そして今になって思い返せば、ダルビッシュが「(技術だけでなく)パワー」を意識していたことは、アメリカに渡った経緯や日頃の発言、ツイッターのポストなどでも垣間見えていた。
アメリカへ渡る前の数年間、ダルビッシュが鬼のようにストイックな肉体改造に取り組んでいたことはよく知られている。数年前にananの表紙でモデルも真っ青なヌードを飾った男は、いつの間にか体重100kgを超えるアイアンマンに進化していた。今年9月にアーリントンのクラブハウスでダルビッシュを見る機会があったが、とにかくその体の厚みと迫力に圧倒されたことを未だ鮮明に覚えている。
ダルビッシュのMLBへの関心は、おそらくウェイトトレーニングへの目覚めと共に強くなっていったものなのではないかと思う。ダルビッシュはその飽くなき向上心故に、日本で何十年も昔から"正しい"とされているやり方に疑問を感じ、そして自分で学び考えていく中で、徐々にアメリカ型のトレーニングやコンディショニングに傾倒していった。そうなると、ダルビッシュ程の選手がMLBに目が向かないという方が不自然な話だ。
日本の"伝統"に疑問を感じていたこと、そしてアメリカ型のトレーニング法に自身が傾倒していることは、今年のオールスターゲーム時の会見でも口にしていた。「日本の野球は進化していない」というトゲのある言葉は一部から反感を買ったが、この言葉には「俺は(従来の日本野球の枠を超えて)パワーで通用するピッチャーになるんだ」という強い覚悟とプライドが滲んでいたように今になって思う。日本でも他の選手らにウェイトトレーニングの必要性を説くなどしたが、それが中々受け入れられなかった(あるいは誰も付いてこれなかった)ことも明らかにした。
ダルビッシュは決して、日本野球を"ディスっている"わけではない(一部の人々にはそう映ってしまうようだが)。むしろ彼は誰よりも日本野球に誇りを持ち「日本人投手の実力を示したい」という思いと共にMLBへと身を移した。だからこそダルビッシュは、それは違うと思うものは遠慮なくハッキリ言葉にするし、良いものは貪欲に取り入れる、それだけのことなのだ。
ダルビッシュは、メジャーリーグで結果を残すだけでなく"パワーで圧倒"する姿を見せつけてこそ、アメリカで認められることができると考えている。そして実際にそういう側面は、大いにあると思う。だからダルビッシュは"力勝負"にこれ程までに拘っていたのだろう。
"野球人生初"のスランプを如何に乗り越えたか
言うまでもなくダルビッシュは、苦しいルーキーイヤーを過ごした。日本時代の姿を少しでも知る者ならばとても想像がつかなかったと思うが、ストライクすらまともに取れないゲームが多々あった。「競技自体が違うと思った」と語る程、ダルビッシュは日本とアメリカに違いに戸惑った。
過去に殆ど経験したこともなかった"スランプ"に陥ったダルビッシュは、やがてメンタルでもスランプに陥り、どんどん迷路の奥にハマっていった。ダルビッシュは絶不調だった夏場の心境を「ファーストストライクをとろうなんて過去に1回も思ったことがなかった」「(ファーストストライクを取れ、フォアボールを減らせなどと言われ)どんどんそういうマインドになってしまった」と振り返る。体が思うようにコントロールできず、次第に心のコントロールも上手くいかなくなるという悪循環に陥っていたのだ。
ダルビッシュがこれだけ(メンタル的に)スランプに陥ってしまったのは、あまりに完璧主義な性格もあったのだと思う。番組でもダルビッシュ自身が「一度完璧主義を崩さなくてはいけないと思った」と語っていたが、それでもダルビッシュは自分の理想を追求し過ぎる性格故に、上手く行かない現実がより重くのしかかってきたのだろう。マウンド上での器用さとは何とも対照的な不器用な性格(それは魅力でもあるのだが)が、ダルビッシュを苦しめたのだ。
そんなダルビッシュを救ったのは、ピッチングコーチのM.マダックスだったという。シーズン通してマンツーマンでコーチングしていたことは勿論だが、不調のどん底にいたダルビッシュにマダックスは自身のポリシーを曲げて「フォアボールをいくら出しても構わないから打たれるな」と告げたという。メンタル的に不安定であることがダルビッシュ不調の大きな要因であると感じたマダックスは、ダルビッシュに自分を取り戻してもらおうとしたのだ。
ダルビッシュは、このマダックスの言葉にとても驚いたという。「(マダックスは)キャリアも充分で絶対にプライドもある。(日本で実績があるとはいえ)ルーキーの自分に、自ら歩み寄ってきてくれたことが信じられなかった。(マダックスだって)自分の力を見せたいでしょうし…あれは本当に助かった」。この一言で気持ちを大分楽にしたダルビッシュは、次第に調子を上げていったのだ。
ダルビッシュが確かに掴んだ"成長"
ダルビッシュのインタビューで個人的に一番印象的だった言葉は、シーズン終了直後のインタビューで口にしていた「去年より成長して追われた」「日本にいたら日本にいたらなりに成長できただろうけど、アメリカに来ての成長なので物凄く大きい」という言葉だ。
ダルビッシュはとにかく"成長"に貪欲だ。アメリカへ渡るときも"挑戦”ではなく"成長"を口にしていたし、今年絶不調だったときも"苦しいときほど成長できるはず"と自らを奮い立たせていた。あるいは、ツイッターでバカな絡みをしてきたファンに対し「そんな暇あったら自分の成長のために時間使って欲しい」と鬼過ぎるリプライで瞬殺(笑)したこともあった。
そんなダルビッシュがシーズンを終えて口にした"成長"。今シーズンのピッチングは、結果としては当然納得がいかないのだろうが、理想に近付けたという確かな手応えを感じているのだろう。
「アメリカに来ての成長なので物凄く大きい」という言葉は"環境"の重要さを示唆していると思う。人間、どこにいても何をしても自分の心掛け次第で成長はできるが、一方で限界もある。自分が望む成長をするためには、それに相応しい場所にいなければならない。ダルビッシュが「メジャーに来るにあたって1番ためになった」という言葉が「一点の曇りもない羊の群れの一員であるためには、まずは何よりも羊でなければならない」というアインシュタインの格言だった(本人が以前、ツイッターで明言している)。
改めて、決して口数は多くないダルビッシュだが、これだけ"自分の言葉"で語れるアスリートも多くないと思う。ダルビッシュの言葉には、誰かに求められたものではない、自分の強い信念と美学が詰まっているとひしひしと感じる。ダルビッシュが僕にとって特別な選手であり続ける理由はまさにここにある。
さて、奇しくも7日、ダルビッシュが来年3月に開催されるWBCに参加する意思がないことがレンジャーズを通して発表された。
先のNHK特番が放送された直後の発表となったが、このタイミングを僕は偶然とは思えない。インタビューでダルビッシュが語っていた内容を踏まえると、来年のWBCに参加せずに最高のシーズンに向けて準備に徹することはあまりに自然だからだ。
レンジャーズから出場辞退の要請など、もしかしたらあったかもしれないが、そうでなくともダルビッシュはWBCを辞退するだろう。それは彼がただ「シーズンに集中したい」からではなく、WBCに出場することに前回(2009年)ほどの意味をきっと見出せないからだ。
仮にWBCに出場して日本を優勝に導いたところでダルビッシュは「日本野球を世界に認めさせた」とは1ミリも思わないだろう。他の誰が思っても、ダルビッシュはきっと思わない。それは彼がインタビューで口にしていた言葉からよくわかるはずだ。メジャーリーグという真剣勝負の舞台で"力勝負"で圧倒してはじめて、ダルビッシュは"日本人投手の実力"を示すことができると考えているのだ。
だからダルビッシュがWBCに出場しないのは、当たり前だが日本野球を見放したわけでは全くない。ダルビッシュは、日本野球の実力を世界に示すにはWBCではなくメジャーリーグという舞台をこそが相応しいと考えているに過ぎない。それだけのことだと思う。
メジャーリーグで成功し高給を貰いたいわけでもなければ(既に貰っているが)、ただチームを勝利に導いて満足するわけでもない。ダルビッシュはダルビッシュ本人にしか理解し得ない自分の世界を既に確立しており、自分が描く"理想のピッチャー"の姿をただただ独り追い求めている。その姿勢には賛否両論あるのかもしれないが、個人的にはダルビッシュのアスリートとしての生き様は最高にカッコイイと思うし、120%応援したい気持ちしかない。
来シーズンが、楽しみで仕方ない。
長い記事だが、好記事である。
「滑るボール、固いマウンド」ダルビッシュの、日本時代からは考えられないあのひどい防御率の原因は、これがすべてだろう。
しかし、マダックスの「いくらファーボールを出してもかまわない。打たれるな」というアドバイスは驚いた。言ったのが、あのマダックスだけに。だが、これは「人を見て法を説け」の実例であり、普通の投手には彼もそうは言わないだろう。
(以下引用)
NHKスペシャル「ダルビッシュ有 大リーグと闘った男」を見て
Splash Hits 2012年11月10日09時23分
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NHKスペシャル | ダルビッシュ有 大リーグと闘った男
今月4日に放送された表題の番組、ご覧になられた方も多いかと思う。NHKの取材班がダルビッシュのルーキーシーズンに密着し、3月(開幕前)、7月(オールスター前)、10月(シーズン終了後)と3度の独占インタビューを行いその内容を編集した特別番組だ。
番組冒頭のナレーションにもある通り、普段は決して多くを語らないダルビッシュだが、番組ではメジャーリーグでのルーキーシーズンを苦しみながらも戦い抜いたダルビッシュの苦悩や葛藤、そして成長が描かれていた。ダルビッシュ本人も自身のTwitterで番組をPRしていたくらいなので、本人にとっても納得のいく(嘘がない)内容になっているのだろう(ダルビッシュは一部の新聞社を「作り話を書く」と度々批判している)。
ダルビッシュ有(Yu Darvish)✔
@faridyu
NHKスペシャル ダルビッシュ有 大リーグと闘った男 今夜9:00〜9:49 よろしくお願いします!
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番組は、ダルビッシュが先発試合に毎回行う"ルーティーン”を語るところからはじまる。ダルビッシュはナイトゲームでの登板日、18:25頃にクラブハウスで必ず1曲、ヘッドフォンで音楽を聴いてからフィールドに向かっていたそうだ。「ラブソングが好き。"アガル系"の曲はあまり好きではない」らしい。
そしてレンジャーズのシーズン終了後、プレスボックスから誰もいないフィールドを眺め「苦しんだマウンドでもあるけど、自分を成長させてくれたマウンドでもあるので…1年で凄く思い入れは強くなりましたね」としみじみ語るスーツ姿のダルビッシュ。ラストゲームから僅か5日後でありながら「大分前のことのよう」というダルビッシュの言葉には、彼がいかにシーズンをもがき苦しみ必死に戦い抜いたかが伺える。
番組ではダルビッシュの今シーズンを時系列で振り返りながら、本人のインタビュー交えダルビッシュの心境、意識がシーズン中どのように変化していったのかに焦点があてられていた。滑るボールや固いマウンドに「競技自体が違う」とまで感じた苦しみや「自分で戦っている状況なので相手と戦える状況ではない」ことへの苛立ち、そして野球人生で初めて陥った精神的な"スランプ"、その先に掴んだ"成長"。
こうしたダルビッシュの苦しみの多くはシーズン中からメディアで語られていたものだったが、番組内でダルビッシュの口から語られた言葉には、新たな発見と驚きがあった。
「技術ではなく力」の勝負に拘っていたダルビッシュ
番組で終始強調されていたのが、ダルビッシュが胸に秘める"力勝負"への拘りだ。野球において"力勝負"というと、ピッチャーなら小細工なしの速球をガンガン投げ込むというイメージだが、意外にもダルビッシュはまさしくそんな"速球勝負"で打者を圧倒したいという思いを強く持っていたようだ。
シーズン開幕前に行われたインタビューでダルビッシュは、その思いを既に口にしていた。「日本は技術技術だから」「技術だけで結果を残しても(日本人投手の評価は)上がらないと思う」「(技術ではなくて)パワーでも勝たないといけない」。シーズン中のインタビューでも「日本人はパワーで勝負できないと思われているところがあるので、それは見せておくべきところかなとは思っている」と語っている。
ダルビッシュがこうした"力勝負"への拘りを強く持っていたことは、個人的に意外だった。というのも、ダルビッシュの口からファストボールのスピードや威力に対する拘りなどをあまり聞いた記憶がなかったからだ。レンジャーズの入団会見時には「自分は変化球投手」と話し、その話し振りからは"速球"に特別拘りがあるようには感じられなかったし、またダルビッシュは以前に理想のピッチングを「27球で完全試合」と口にしていたこともあったと記憶している。番組でも自身の強みについて「試合ごとに全く違うピッチャーになれること」と断言していた。
それだけに、ダルビッシュが今年これ程までに"力勝負"に拘りを持っていたことには驚かされた。先述の通り、メジャーリーグに臨む心境をダルビッシュは「パワーで勝負できるところを見せたい」と語り、またある登板日の試合後、日本人記者から奪三振の多さについて言及されるも「まあ、変化球で逃げ回っていれば(三振は)取れるんじゃないですか」と、自嘲的な半笑いで答える姿は衝撃的でさえあった。今年7月に「(前半戦について)結果は良いですけど、評価に値しない。なかったことになっている」と断言したダルビッシュは、明らかに"結果"以外のもの、すなわち自分が理想とする"力勝負"を追い求めていた。
ダルビッシュは"力勝負"に拘っているといっても、決してスピードガンコンテストをしているわけではない。そうではなくてダルビッシュが抱えているのは、並いる強打者たちを「パワーで圧倒したい」という思いだ。そして今になって思い返せば、ダルビッシュが「(技術だけでなく)パワー」を意識していたことは、アメリカに渡った経緯や日頃の発言、ツイッターのポストなどでも垣間見えていた。
アメリカへ渡る前の数年間、ダルビッシュが鬼のようにストイックな肉体改造に取り組んでいたことはよく知られている。数年前にananの表紙でモデルも真っ青なヌードを飾った男は、いつの間にか体重100kgを超えるアイアンマンに進化していた。今年9月にアーリントンのクラブハウスでダルビッシュを見る機会があったが、とにかくその体の厚みと迫力に圧倒されたことを未だ鮮明に覚えている。
ダルビッシュのMLBへの関心は、おそらくウェイトトレーニングへの目覚めと共に強くなっていったものなのではないかと思う。ダルビッシュはその飽くなき向上心故に、日本で何十年も昔から"正しい"とされているやり方に疑問を感じ、そして自分で学び考えていく中で、徐々にアメリカ型のトレーニングやコンディショニングに傾倒していった。そうなると、ダルビッシュ程の選手がMLBに目が向かないという方が不自然な話だ。
日本の"伝統"に疑問を感じていたこと、そしてアメリカ型のトレーニング法に自身が傾倒していることは、今年のオールスターゲーム時の会見でも口にしていた。「日本の野球は進化していない」というトゲのある言葉は一部から反感を買ったが、この言葉には「俺は(従来の日本野球の枠を超えて)パワーで通用するピッチャーになるんだ」という強い覚悟とプライドが滲んでいたように今になって思う。日本でも他の選手らにウェイトトレーニングの必要性を説くなどしたが、それが中々受け入れられなかった(あるいは誰も付いてこれなかった)ことも明らかにした。
ダルビッシュは決して、日本野球を"ディスっている"わけではない(一部の人々にはそう映ってしまうようだが)。むしろ彼は誰よりも日本野球に誇りを持ち「日本人投手の実力を示したい」という思いと共にMLBへと身を移した。だからこそダルビッシュは、それは違うと思うものは遠慮なくハッキリ言葉にするし、良いものは貪欲に取り入れる、それだけのことなのだ。
ダルビッシュは、メジャーリーグで結果を残すだけでなく"パワーで圧倒"する姿を見せつけてこそ、アメリカで認められることができると考えている。そして実際にそういう側面は、大いにあると思う。だからダルビッシュは"力勝負"にこれ程までに拘っていたのだろう。
"野球人生初"のスランプを如何に乗り越えたか
言うまでもなくダルビッシュは、苦しいルーキーイヤーを過ごした。日本時代の姿を少しでも知る者ならばとても想像がつかなかったと思うが、ストライクすらまともに取れないゲームが多々あった。「競技自体が違うと思った」と語る程、ダルビッシュは日本とアメリカに違いに戸惑った。
過去に殆ど経験したこともなかった"スランプ"に陥ったダルビッシュは、やがてメンタルでもスランプに陥り、どんどん迷路の奥にハマっていった。ダルビッシュは絶不調だった夏場の心境を「ファーストストライクをとろうなんて過去に1回も思ったことがなかった」「(ファーストストライクを取れ、フォアボールを減らせなどと言われ)どんどんそういうマインドになってしまった」と振り返る。体が思うようにコントロールできず、次第に心のコントロールも上手くいかなくなるという悪循環に陥っていたのだ。
ダルビッシュがこれだけ(メンタル的に)スランプに陥ってしまったのは、あまりに完璧主義な性格もあったのだと思う。番組でもダルビッシュ自身が「一度完璧主義を崩さなくてはいけないと思った」と語っていたが、それでもダルビッシュは自分の理想を追求し過ぎる性格故に、上手く行かない現実がより重くのしかかってきたのだろう。マウンド上での器用さとは何とも対照的な不器用な性格(それは魅力でもあるのだが)が、ダルビッシュを苦しめたのだ。
そんなダルビッシュを救ったのは、ピッチングコーチのM.マダックスだったという。シーズン通してマンツーマンでコーチングしていたことは勿論だが、不調のどん底にいたダルビッシュにマダックスは自身のポリシーを曲げて「フォアボールをいくら出しても構わないから打たれるな」と告げたという。メンタル的に不安定であることがダルビッシュ不調の大きな要因であると感じたマダックスは、ダルビッシュに自分を取り戻してもらおうとしたのだ。
ダルビッシュは、このマダックスの言葉にとても驚いたという。「(マダックスは)キャリアも充分で絶対にプライドもある。(日本で実績があるとはいえ)ルーキーの自分に、自ら歩み寄ってきてくれたことが信じられなかった。(マダックスだって)自分の力を見せたいでしょうし…あれは本当に助かった」。この一言で気持ちを大分楽にしたダルビッシュは、次第に調子を上げていったのだ。
ダルビッシュが確かに掴んだ"成長"
ダルビッシュのインタビューで個人的に一番印象的だった言葉は、シーズン終了直後のインタビューで口にしていた「去年より成長して追われた」「日本にいたら日本にいたらなりに成長できただろうけど、アメリカに来ての成長なので物凄く大きい」という言葉だ。
ダルビッシュはとにかく"成長"に貪欲だ。アメリカへ渡るときも"挑戦”ではなく"成長"を口にしていたし、今年絶不調だったときも"苦しいときほど成長できるはず"と自らを奮い立たせていた。あるいは、ツイッターでバカな絡みをしてきたファンに対し「そんな暇あったら自分の成長のために時間使って欲しい」と鬼過ぎるリプライで瞬殺(笑)したこともあった。
そんなダルビッシュがシーズンを終えて口にした"成長"。今シーズンのピッチングは、結果としては当然納得がいかないのだろうが、理想に近付けたという確かな手応えを感じているのだろう。
「アメリカに来ての成長なので物凄く大きい」という言葉は"環境"の重要さを示唆していると思う。人間、どこにいても何をしても自分の心掛け次第で成長はできるが、一方で限界もある。自分が望む成長をするためには、それに相応しい場所にいなければならない。ダルビッシュが「メジャーに来るにあたって1番ためになった」という言葉が「一点の曇りもない羊の群れの一員であるためには、まずは何よりも羊でなければならない」というアインシュタインの格言だった(本人が以前、ツイッターで明言している)。
改めて、決して口数は多くないダルビッシュだが、これだけ"自分の言葉"で語れるアスリートも多くないと思う。ダルビッシュの言葉には、誰かに求められたものではない、自分の強い信念と美学が詰まっているとひしひしと感じる。ダルビッシュが僕にとって特別な選手であり続ける理由はまさにここにある。
さて、奇しくも7日、ダルビッシュが来年3月に開催されるWBCに参加する意思がないことがレンジャーズを通して発表された。
先のNHK特番が放送された直後の発表となったが、このタイミングを僕は偶然とは思えない。インタビューでダルビッシュが語っていた内容を踏まえると、来年のWBCに参加せずに最高のシーズンに向けて準備に徹することはあまりに自然だからだ。
レンジャーズから出場辞退の要請など、もしかしたらあったかもしれないが、そうでなくともダルビッシュはWBCを辞退するだろう。それは彼がただ「シーズンに集中したい」からではなく、WBCに出場することに前回(2009年)ほどの意味をきっと見出せないからだ。
仮にWBCに出場して日本を優勝に導いたところでダルビッシュは「日本野球を世界に認めさせた」とは1ミリも思わないだろう。他の誰が思っても、ダルビッシュはきっと思わない。それは彼がインタビューで口にしていた言葉からよくわかるはずだ。メジャーリーグという真剣勝負の舞台で"力勝負"で圧倒してはじめて、ダルビッシュは"日本人投手の実力"を示すことができると考えているのだ。
だからダルビッシュがWBCに出場しないのは、当たり前だが日本野球を見放したわけでは全くない。ダルビッシュは、日本野球の実力を世界に示すにはWBCではなくメジャーリーグという舞台をこそが相応しいと考えているに過ぎない。それだけのことだと思う。
メジャーリーグで成功し高給を貰いたいわけでもなければ(既に貰っているが)、ただチームを勝利に導いて満足するわけでもない。ダルビッシュはダルビッシュ本人にしか理解し得ない自分の世界を既に確立しており、自分が描く"理想のピッチャー"の姿をただただ独り追い求めている。その姿勢には賛否両論あるのかもしれないが、個人的にはダルビッシュのアスリートとしての生き様は最高にカッコイイと思うし、120%応援したい気持ちしかない。
来シーズンが、楽しみで仕方ない。
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