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ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です 管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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その五十三 神の顕現とは……

「これは難しいな。まず、ヘスペリアとは西のことだ。だから、グリセリードから見て西、つまりアスカルファンか、それよりもずっと西、ロータシアのことだろう。わしにはこれは予言のように思えるな。七つの噴水とは、世界の、または西側の七つの国だろう。聖なる見者がいつかこの世に現れ、東と西の世界を結び付け、この世に地上の天国をもたらすということだ。翼竜が三度魔法の水を飲み干し、自らの体を裂くとは、東と西の大戦争だろう。その三度の戦争の後で、太陽と月の助けによって、つまり時間が流れ、あるいは力と知恵によって、この世を地上の天国にする魔法の鍵が手に入る。その魔法の鍵とは、あるいはこの世の全員を飢えや貧困から解放する大発明かもしれん」
 ソクラトンはこのように言いました。チャックがさらに追求します。
「永遠に燃える枝とか、アジアの教会の印の意味は?」
「永遠に燃える枝とは、西の世界の宗教の象徴だ。したがって、栄光の噴出とは、東にも西にもともに受け入れられる人類の最後の絆だろうな。宗教に代わる知恵かもしれん。もしかしたら、それを知れば人々がもはや争いや欲望の空しさを知り、互いに手をとって生きるようになる、あらゆる宗教の精髄を表したたった一言の真理かもしれん」
「魔法の鍵が本物の、物体としての鍵だとは思いませんか?」
「それはわしには信じられないな。もちろん、単なる黄金のたぐいの宝を隠した場所のてがかりだということなら、おおいにありうることだ。つまり、凡人にとっての地上の天国とは、無限の富を手に入れることだろうからな。そうなると、地上のすべての人間にとってこの世に天国が出現するというのは、伝説でしかないということだ」
その後で、ソクラトンはしばらく黙って考えていましたが、やがて重い口を開きました。
「今の話をしているうちに、わしには一つの想像が生まれた。これは恐るべき想像だ。人類全体の存在意義に関わるものだ。
 魔法の鍵、天国の鍵で天国が開けられるというのはどういうことかとわしは考えた。天国の門が開いて、そしてこの世に神が現れるのだ。
 これがどういうことかわかるか?
 もはや神を信じるも信じないもないのだ。神はそこに現前しているのだからな。神はもはや事実なのだ。ということは、神が明らかに存在する以上、神の教えに反することは何一つ不可能になるのだ。これは信仰ではない。善行はもはや単に機械的な行為でしかないのだ。それ以外にどんな道がある? これは悪よりもなお悪い状態だとわしには思える。悪をなしても人間はなお人間だが、善行以外に行動の選択ができない人間とは、自由意志のない存在、神の操り人形でしかないのだ」
「つまり、神が現前してしまった世の中では、もはや人間には存在価値はないと?」
セイルンが言いました。
「その通りだ。人間が人間であるためには、神は隠れた神でなければならないのだ」



その五十四 聖なる印

「では、あなたはこの世の悪にも存在意義があると思うのですね」
チャックが勝ち誇ったように言いました。
「そうとも言えるし、そうでないとも言える。わしは、これまで人々に善をすすめてきた。それは、善こそが人間に真の利益、幸福をもたらすからだ。だが、悪の無い世界を望むかといえば、そうだとは言い切れん。悪が存在しなければ善もまた存在しない。悪を選びうるという前提でこそ、善を選ぶことの意味はあるのだ。結果だけで言えばどちらでも同じだろうが、そこに、単なる自動機械とは異なる人間が存在するのだ。悪の存在意義とは、存在を否定されるべきものとして存在することにあるのだ」
「難しい議論ですね」
ハンスはため息をつきました。ハンスにとっては、善は善、悪は悪で、この世からすべての悪が消滅すれば人々はみんな幸福になるだろう、というくらいの考えしかなかったのですが、どうもそれではすまないようです。
ともかく、ソクラトンのところにはサファイアは無い、ということですが、太陽の光の実験は翌日することにし、今晩はここで泊めてもらうことにしました。
翌日ソクラトンの部屋の窓から、外の黒い松の木の葉ごしにもれてくる太陽の光にハンスの水晶の腕輪をかざしてみると、太陽の光は虹のようにきれいに分光されました。
水晶の腕輪は、透明な四つの三角柱の水晶の間に三つの青、赤紫、碧の透明な宝石の丸い珠がありましたので、腕輪をつらぬいている紐をはずして、その七つの宝石をならべました。
最初は一本の水晶柱を窓のそばに置き、太陽光を分光します。次に、その光の中の淡紅色、紫赤色、紫色の三つを三つの水晶柱で再度集め、その焦点のところに碧色の宝石を置きました。でも、何も現れません。赤紫色の宝石でもだめです。しかし、青い宝石を置くと、そこに一つの印が現れました。それは、英語の小文字のxの筆記体、つまりcを背中合わせにくっつけたような印でした。
ソクラトンを除いた四人は歓声をあげました。ソクラトンも、ほほうというような顔をしています。
「これはわしの負けだな。これが天国への入り口を示す印か」
「どういう意味ですかね」
ハンスが言うと、ソクラトンは少し考えて、言いました
「始原、もしくは再生の意味だろうな。おそらくは後者だ。閉じられた輪、円形は完成を表し、完成とは物事の死でもある。この形は、二つに割れた輪が背中合わせに結びつき、新たに出発するということだろう。そして、この記号がもう一つくっつけば、そこに一つの輪ができる。そうして無数の輪が永遠につながっていくのだ。つまりは、死と結びつく事のない完成という奇跡を意味しているのではないかな」


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