戸田恵梨香(左)と永野芽郁(C)日刊ゲンダイ
戸田恵梨香(左)と永野芽郁(C)日刊ゲンダイ© 日刊ゲンダイDIGITAL

「あのドラマ、いかがなものですかねえ。お巡りさんは嫌な思いをしてますよ」──警察庁OBがこう話すのを聞いた。


フジテレビ系ドラマ「風間公親-教場0-」である。


主人公の風間公親(木村拓哉)は新米刑事を一人前に育てる刑事指導官なのだが、「ほめて伸ばす」のではなく、「しごいて鍛える」というパワハラのブラック上司。期待に応えられないとたちまち見捨てられ、このときの決めゼリフが「君には見込みがない。交番勤務に戻ってもらう」だ。事件現場でも、指導を受けようと質問すると、「自分で考えて答えを出せ。答えが出なければ交番に戻れ」と言い放つ。これに交番で働くお巡りさんたちは不愉快な思いをしているらしい。


「交番勤務の警察官は能力が低いと言っているのと同じで、明らかに見下した言い方ですよね。初めの1話、2話なら、エピソードのひとつと見過ごせても、毎回となると、そういう偏見を持ったドラマなのかということになります」(放送作家)


番組の公式ツイッターでは、「交番勤務はすべての警察官が最初に経験する現場で、基礎の基礎を叩きこまれる場で“初心に戻ってやり直せ”という風間さんなりの考えが込められているんですよね」と弁明しているが、それって、体罰教師の「愛のムチだった」という言い訳と同じじゃないか? だったら「一から勉強しなおせ」というセリフにすればいい。

交番勤務ということでは、「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(日本テレビ系)という楽しいドラマがある。ハコ(交番)に詰めている(勤務している)警察官たちの苦労や働きがい、失敗や手柄をコミカルに描いた傑作で、「大変だなあ。ご苦労さま」というリスペクトがあった。「教場0」にはそれがない。


■警察関係者が問題視する表現


警察関係者が問題視している風間のセリフはまだある。容疑者を自白に追い込むことを、「犯人を仕留める」という言い方をするのだ。しかし、警察の取り調べ段階では、逮捕していても、あくまで被疑者であって犯人ではない。


「取り調べの可視化が言われる時代に、被疑者を狩猟の獲物のように“仕留める”なんて言う感覚では、警察・検察内部でも人権軽視と問題になるでしょう。自白を強要するかのようなこんな刑事の調書では、公判で証拠能力が問われます。ドラマとはいえ、あまりにも実態とかけ離れていて、嫌な思いをしているのは、交番勤務のお巡りさんだけでなく、当の刑事指導官たちもそうなんじゃないかな」(ヤメ検弁護士)


第6話では、ようやく刑事合格にした新米が、手順を無視して被疑者をひとりで追いかけてナイフで首を切られ、風間も右目にアイスピックを突き立てられる。いったい風間は何を教えてきたのだろう。「教場0」は脚本も演出も雑で無神経な警察ドラマと言うしかない。


最終話で、交番勤務に戻した新米たちをフォローするシーンが用意されているのかもしれないが、理不尽なハラスメントドラマでは見続ける気がうせる。


キムタク史上最低の視聴率になりそうだ。


(コラムニスト・海原かみな)