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ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です 管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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この「アンファニズム」のようなお遊び暇つぶしブログに「文学論」を書くのは書く場所が違うだろう、と言われそうだが、小説や文学(「学問」か?)に興味がある人向けに書く。

早朝(未明)の闇の中で散歩をしながら考えたのだが、「ハードボイルド小説は男のハーレクインロマンスだ」というセリフを最初に言ったのは誰だろうか。私は恩田陸の作品の中でこのセリフを二度見た記憶があるので、たぶん恩田陸だと思う。もちろん、このセリフはハードボイルド小説も男もけなしているのである。あんな安っぽい小説を好む連中は馬鹿だ、というわけだ。と同時に、これはハーレクインロマンスをもけなしているのだが、今でもこの類の女性向き三文小説は出版され続けているのだろうか。
で、問題は「需要があるから出版される」のは確かなのに、なぜそれをけなすのかだが、それは恩田陸に「私が書く小説は高級品であり、ハードボイルド小説やハーレクインロマンスは誰でも書ける低級品だ」という意識があるからであるのは確かだろう。
さて、問題は、たとえば100円ショップで買える品は無価値で、銀座の店で買う品は価値が高いと言えるのかどうかだ。
私が100円ショップで買った指無し手袋は非常に丈夫で使い勝手が良く、数年も愛用している。つまり、利用価値から言えば、銀座の服装品(服飾品?)店で買う手袋の数倍の価値があると私は思っている。
まあ、小説(文学)と手袋を同一には論じられないのは当然だが、では、「価値の高い文学」と「価値の低い文学」の価値を決めるのは誰か、だ。たとえば、三島由紀夫は太宰治の小説が大嫌いだったが、はたして太宰の作品価値は三島より劣るだろうか。私は、その逆だと思っている。三島は文芸評論家としての才能は髙かったし、優れた短編小説もいくつか書いている。しかし、作品全体としての価値は、太宰にはるかに及ばない、というのが私の評価だ。
恩田陸に話を戻せば、私は彼女の作品は面白いと思っていて、古書店ではかなりたくさん買っている。しかし、新刊で高いカネを出して買おうとは思わないのである。それが私にとっての彼女の作品価値だ。
もちろん、ハードボイルド作品の9割くらいは、ただでも貰う気はしない。私にとっては読む時間のほうがはるかに貴重だからだ。
しかし、それによってハードボイルド小説というジャンル全体を否定するのはおかしいだろう、というのが私の考えである。

本当は、そこから男と女についての哲学的考察、特に男女におけるセックスの意味の違いというものまで考察したのだが、それはまた別の機会に書くことにする。

ちなみに、私は(もちろん、全部読んではいないが)恩田陸の全小説は、柳田国男の「遠野物語」「山の人生」の中のふたつの短いエピソードとその文章にはるかに及ばないと思っている。それが「文学的価値」である。少し奇抜な言い方をすれば、ここに「ハードボイルド」の真髄がある、とも言えるような気がしないでもない。つまり、単なる現実を超えた、「象徴として天空に屹立したリアル」である。
もちろん、小説論の例として「遠野物語」「山の人生」を出すのは不適切だが、残念ながら私はハードボイルド小説の中に「ハードボイルド」の好例を思いつけないのである。ノンフィクション作品のほうがはるかにハードボイルドだろうが、また、私はそういうのが好みでもないのである。娯楽性を加味するなら、所詮は「男のハーレクインロマンス」になるしかないわけだ。つまり、私は恩田陸の発言を半分認めてはいるのである。ただ、その種のジャンルを「けなす」のはおかしいだろう、という話だ。
ハードボイルド小説が売れなくなったところで恩田陸の小説がいっそう売れるわけでもないだろうし。


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タイガー! タイガー! 11章 2017/10/13 (Fri)


第十一章 渡河



目指すタイラスで先のような会話がなされているとは知らず、グエンとフォックスは、いかにして国境を突破するかの相談をしていた。

グエンは、そのまま関所を突破すればいいという意見だったが、フォックスはそれほど能天気な作戦は取りたくなかった。いくらグエンが抜群の武勇の持ち主でも、100名近くの兵士がいるという国境の砦のそばの関所を大人二人だけで突破できるとは思えない。大人二人とは言っても、実際に敵に当たれるのはグエンだけだろう。フォックスは、せいぜい子供二人を守るくらいだ。

「それでいい。お前が子供たちを守っていてくれれば、敵は俺一人で何とかする」

フォックスの言葉にグエンは笑い顔のような表情でそう言った。虎の顔そのものだのに、なぜかそれが笑い顔に見えるのは、グエンの顔を他の者たちが見慣れて、微妙な表情の区別がつくようになってきたからだろうか。

グエンの話し方も、ずいぶんまともになってきている。これまでのような、ブツブツと切るような話し方ではなくなっている。流暢でこそないが、普通に口の重い人間程度の話し方になっている。



フォックスの話では、ここから国境までは、おそらくあと1日の距離だろうということだ。もちろん、彼女もここに来たのは初めてであるが、少し前に通った分かれ道の道標に国境まで20ピロとあったのである。



風に混じる水の音をグエンの鋭い聴覚は聞きつけた。

「近くに川があるな。水の匂いもする」

グエンは空気の匂いをかいだ。

「エーデル川ですね。では、すぐに国境です」

「この道をそのまま進めば、どうしても関所を通ることになるが、俺としても無駄に人を殺したくはないから、ほかの場所から川を渡れないか、探してみよう」

グエンは口では言わなかったが、タイラス国を通過する際に、あまり人目につかないほうがいいのではないかという気もしていたのである。兵士たちと大立ち回りをして国境を突破しては、自分たちの所在を多くの人に知られてしまう。兵士の100人程度を相手にするのに不安は無いが、その全員を殺すことは困難だろう。とすると、その場を逃げ出した兵士の口からグエンたちの足跡が知られてしまう。また、タイラス国内で兵士たちに不審尋問され、思わぬ害を受けないものでもない。潜行するのがやはり最良の方法かと、グエンは考えを変えていた。



荷車は道から離れた茂みの中に隠し、食糧などの荷物を載せた馬を引いてグエンたちは林の中に入っていった。子供たちも当然、歩くことになる。



やがて断崖に出た。この場所から下を流れる川までの高さは70マートルほどだろうか。反対側の断崖の高さも同じようなものだ。しかし、じっくり見ると、400マートルほど下流では木々の緑が川から数マートル程度まで下りている。つまり、崖の高さが低くなっている。川幅もそこはやや狭いようだ。おそらく80マートル程度か。

上流の方を見ると、ここから300マートルほど離れたところに吊橋がかかっている。先ほど進んでいた道をさらに行くと、あの吊橋に出たわけだが、しかしその前にサントネージュ側の関所があり、吊橋を渡るとタイラス側の関所があるはずだ。

「あの、下流の低い部分から渡ることにしよう。ちょうど、川が曲がって上流の関所のあたりからは見えなくなっている。俺たちのいるこの崖が川の曲がり角だ」

「しかし、川をどのようにして渡るのです?」

「お前は泳ぎはできないのか?」

「私はできますが、子供たちは無理です」

「子供たちは俺が二人とも背中にかついで泳ぐ」

「そんなことができますか?」

「多分な。俺の首に両側からしがみついていればよい。どうだ?」

グエンはソフィに聞いた。

ソフィは一瞬しかためらわなかった。

「やってみます。ダン、大丈夫よね? 絶対に手を離しちゃだめよ」

「うん、大丈夫だよ」

「良い子だ」

グエンは頷いて微笑んだ。



さらに林の中を下流方向に向かって進み、やがて川に下りていけそうな場所に来た。かなりの急勾配だが、下りていくことはできる。馬たちとは別れるしかない。荷物を馬から下ろし、グエンが肩にかつぐ。

何度か足を滑らしながらも4人は何とか崖を下りて河原に着いた。

ほっと息をついて一休みする。時刻は午後4時ころだろうか。崖の間の河原だから、すでにあたりは暗い。

軽い食事をして、いよいよ渡河にとりかかる。

まず、グエンと子供たちを長い布で結びつける。この布はキダムの村を出る時に、グエンの意見で購入してあったものだ。山越えをする時に、ロープ状のものが必要になるという見通しによるものである。通常のロープよりも、布のほうが様々な利用価値がある。

子供たちとの間は短めに、そしてフォックスとグエンの間は4マートルほどの長さで結びつける。これはフォックスが泳ぐ邪魔にならないようにだ。

「では、いくぞ。心の準備はいいな? 絶対に俺の首から手を放すなよ」

グエンの言葉に二人の子供は頷く。

グエンが川に入るすぐ後に子供たちが続き、腰ほどの深さになった時に、グエンは身を沈めて首だけが川面に出るようにした。その意図を理解して子供たちは両側からグエンの首に抱きつく。

「苦しくないですか?」

ソフィの言葉にグエンはにやりと笑う。

「いや、少しも。もっと強くしがみついたほうがいい。俺の首の太さは子供の力で窒息などしない」

ソフィとダンはそれを聞いて、もっと強くグエンの首にしがみつく。

「それくらいでいい。ではいくぞ。顔をずっと水の外に出しているのだぞ?」

「はい!」

グエンは平泳ぎの要領で静かに泳ぎ出した。

遅れないように、フォックスもその後に続く。

泳いでいると、水面の上は案外と明るく、また真上にある空は河原にいた時よりも明るく見える。

(この人がいなかったら、私たちはどうなっていただろう。あのサルガスの野でグエンと出会ったのは、何と幸運なことだったことだろうか)

先を泳ぐグエンを見ながら、フォックスは考えていた。そのグエンは子供二人を背中に背負い、しかも腰には荷物の袋をつなぎながら、何の苦もなさそうに泳いでいく。身一つのフォックスの方が、遅れそうになるほどだ。

幸いなことに、川の流れは穏やかで、やがてグエンとフォックスの足は反対側の川床に触れた。

彼らが川岸に上がった時には、あたりは完全に夕闇に包まれていた。



季節は初夏だが、このあたりは高地だからやや寒い。濡れたままの体だと病気になる危険がある。砦や関所からは見えないことを期待して、グエンたちは火打石を使って火を起こした。枯れ枝を積み上げ、それに火をつける。

やがて、炎が高々と上がった。その周りに4人は集まって体を乾かす。

水に濡れた干し肉も炙り直し、そのうちの幾つかを夜食にする。

彼らのいるあたりは明るいが、少し離れた所は真っ暗である。



「誰だ!?」

グエンが低い誰何の声を上げた。闇の中から彼らに近づく者の気配を感じたのである。



こいつが天下を取るなら日本人のIQは20くらいだろう。
私は一応、(2話連続なので)2話まで見たが、あまりの馬鹿馬鹿しい謎解きに、見ているこちらが死ぬかと思った。そうすれば、「テレビ視聴中、謎の変死」で、推理ネタになっただろうww
要するに、新コロワクチン押しで製薬会社その他に功績を認められてのコネアニメ化である。

5 名無しみくす 2025年04月03日 01:55
煽りん坊の医クラが原作のやつだろ?

スレ立てした馬鹿も「素養」の使い方がおかしい。国語の素養ゼロである。素養とは「基礎的教養」の意味だ。ヒットできる「素材」ではあった、と言うのが正しい。まあ、言い方としては、の話だ。この原作でヒットできると思った制作委員会が低能である。
低能でも(家が金持ちなら)医者になれるし、(レベルは無視したうえで)推理小説も書ける、という点では低能の方々を勇気づけたかもしれない。

(以下引用)

アニメ『天久鷹央』←こいつが天下取れなかった理由
2025年04月03日 21コメント アニメ
uhrtszatj

1: 名無しさん ID:otakumix
素養はあったはず


2: 名無しさん ID:otakumix
天久先生が痛々しくてみてらんない

3: 名無しさん ID:otakumix
作画崩壊
謎ときがコナンレベル

4: 名無しさん ID:otakumix
ゴミアニメの素養はあった

5: 名無しさん ID:otakumix
やたらイキってるけど男いないと何もできないチビ

6: 名無しさん ID:otakumix
知的すぎた
バカには合わない

7: 名無しさん ID:otakumix
ヒロインの性格がね…
あれで本当にガキだったらまだ可愛げあるんだけど成人であの情緒は痛すぎる

8: 名無しさん ID:otakumix
コナンみたいに一話とか二話完結かと思ってたら微妙に話つながってて訳わかんなくなったわ

9: 名無しさん ID:otakumix
素養っなんの素養だよ
新しい要素何も無いだろ

10: 名無しさん ID:otakumix
医学の話してる時は面白いけど人体発火の話はあほかとおもった

11: 名無しさん ID:otakumix
>>10
創作物で楽しめよ

12: 名無しさん ID:otakumix
1クールで3回実写特番

元から予定されてたってのが逆になんで3回もやったの?って

13: 名無しさん ID:otakumix
子供のセンセーだからしゃーない

14: 名無しさん ID:otakumix
映像化って難しいなって
文章なら叙述トリック使えても
映像だとね

16: 名無しさん ID:otakumix
幼稚すぎる

17: 名無しさん ID:otakumix
なんかあの閃いた時の音楽と指の動き見てると小っ恥ずかしくなってくる

18: 名無しさん ID:otakumix
原作が小説ってことは
ああいうガリレオみたいな演出はアニメスタッフが作ってんのか

19: 名無しさん ID:otakumix
>>18
映像化ってそういうもんだろ
それが映像の価値なんだから

20: 名無しさん ID:otakumix
2話まで見たけどオチがしょぼかった
あと青い血が云々がなんか単純に気持ち悪かったんだよね

26: 名無しさん ID:otakumix
最後は相棒の空手の暴力で解決するとこも稚拙だよな

29: 名無しさん ID:otakumix
これ中の人が佐倉綾音ではなく
阿澄佳奈とかだったらまだマシだった

33: 名無しさん ID:otakumix
>>29
これだったらとりあえず3話目くらいまでは見ようかなという気になったわ

30: 名無しさん ID:otakumix
1話見たときは今季最優先で視聴しようと思ってたのに優先度めっちゃ下がったわ
やっぱ天久先生のイキりがいけなかったのか

31: 名無しさん ID:otakumix
>>30
見た目子供だからギリ許されるけど
大人がやったらただのパワハラだからな

34: 名無しさん ID:otakumix
途中途中でわけわからん企画いれたから
あとはドラマ版ヒロインの影響

Comment-コメント-

1 名無しみくす 2025年04月03日 01:20
ただただ主人公が不快なだけのどうでもいい作品だった。
作者の手腕が稚拙でみてられないレベル。
2 名無しみくす 2025年04月03日 01:23
主演が佐倉綾音だから
3 名無しみくす 2025年04月03日 01:23
作画崩壊
4 名無しみくす 2025年04月03日 01:34
天下が取れる要素あったか?
5 名無しみくす 2025年04月03日 01:55
煽りん坊の医クラが原作のやつだろ?
ふさわしい末路だわ
6 名無しみくす 2025年04月03日 02:11
特番3回ってやる気あんのか(笑)
7 名無しみくす 2025年04月03日 02:48
作画崩壊と部屋に異常な数のトイレットペーパー
8 名無しみくす 2025年04月03日 03:01
ガチでドクターハウスのパクリ作品だし
アメリカの医療ドラマの主人公女に変えただけだぞこれ
9 名無しみくす 2025年04月03日 03:30
そもそもストーリーが面白くない
10 名無しみくす 2025年04月03日 04:10
元々お前ら以外の層からそれなりの評価を受ければいいって作りだろ
11 名無しみくす 2025年04月03日 04:53
作画特番
原作読んでた俺が見なくなってた
12 名無しみくす 2025年04月03日 04:53
ドラマの方に話題を取られた。
薬屋のひとりごとと被っている。
13 名無しみくす 2025年04月03日 05:18
こんな端役にこの人が?と思ったら犯人だったりで声優で予想が出来たアニメ
14 名無しみくす 2025年04月03日 06:35
主役がゴリ鼻ブス佐倉だから。ドラマ版も主役がゴリ推しパワハラ橋本だから爆死確定だな。
15 名無しみくす 2025年04月03日 06:42
痴的すぎた
バカにすら合わない
16 名無しみくす 2025年04月03日 06:54
>>2
俺もそれで0話切りした
17 名無しみくす 2025年04月03日 07:31
オタクに作画のまずさを指摘されまくって終わった印象
個人的には気にならなかったけど
18 名無しみくす 2025年04月03日 07:34
>>1
話の内容はおもしろいけど主人公の決め台詞が馬鹿っぽいのと人が目の前でら死にかけてるのに救助活動よりも説明して家族が必死なのシュールすぎて先に救急車呼べやってなったわwあのシーン考えたのアホ過ぎ
19 名無しみくす 2025年04月03日 07:38
>>4
キャラデザからして無理や
20 名無しみくす 2025年04月03日 07:48
映像面での見栄えの良さ・説得力の作りが厳しかったとしか
別にこれだけじゃなく他の推理"小説"原作のアニメ全般に言えるけどさ

21 名無しみくす 2025年04月03日 08:19
原作力が
メダリストの5000億分の1だから
小林秀雄が対談集の中で、太宰治のことを「あの人はバカじゃありません、ヒステリイです」と言っているが、至言だと思う。バカどころか太宰は異常に頭がいい人間だと思うが、自分の性格の中のヒステリー性を熟知していて、それを作品に正確に描いていると思う。そういうところは筒井康隆に似ているようだ。
三島由紀夫が太宰を嫌ったのは、そういう「道化」的なところだろう。太宰と三島はナルシストという点ではそっくりだが、三島は「他人に笑われること」が大嫌いだったと思う。それが彼の作品のユーモア性の欠如の原因でもある。他人を笑わせるには自分自身が道化にならないといけないのである。
三島は詩人として出発したはずで、そもそも詩情とユーモアは相反するものだ。筒井の作品で詩情を意図したと思われる作品(まったく笑いの無い作品)は、だいたい失敗している。つまり、読者にとっては面白くもないし、詩情も感じない。太宰の作品にも詩情は欠如している。
タイガー! タイガー! 9章10章 2017/10/12 (Thu)

第九章 ある会話



グエンたちから王女と王子を奪いそこなった黒衣の男二人は、馬も失っていたので、徒歩で国境の砦まで歩くしかなかった。首都オパールまで戻る気は毛頭なく、国境の砦で兵士を徴発して再度、グエンたちに挑むつもりであった。だが、グエンたちよりも、おそらく半日から1日程度の遅れがある。

「ランド砦まで、あとどれくらいだ」

一人が、もう一人に聞いた。

「あと30ピロほどだろう。今日の夜もこのまま歩けば、明日の朝には着けると思う」

「おそらく、あの虎頭たちは、夜は休むはずだから、その間に追いつけるかもしれんな」

「だが、追いついても、逆にこちらが危ない。追いついたら、あいつらに見つからないように、隠れながら、後を追おう」

「あの、虎頭は何者だ。サントネージュに、あのような騎士がいたという話は聞いたことがない」

「あの頭が仮面だとしても、あれほどの力量を持った騎士は誰がいる?」

「俺の知っている騎士ではウジェーヌとマリオンが一番良い腕をしているが、あいつとは強さの次元が違う」

「では、他の諸侯のところの騎士か。それでも、あれほどの腕の者がいるという話は聞いたことがない」

「サントネージュの者ではないかもしれない」

「ユラリアの兵士たちを殺害しているのだから、ユラリアの者ではないだろうな」

「では、タイラスから、王子と王女を救出するために遣わされた者か?」

「その可能性はあるが、あまりにも救出が早すぎる。それなら、まるでユラリアの侵攻をあらかじめ知っていて、王子と王女が落ち延びることも知っていたみたいだ」

「よい魔道士を抱えているのかもしれない」

「デルマーボッグ様は、遠く離れた場所で起こっていることが見えるというから、他国にもそのような魔道士がいてもおかしくはないな」

デルマーボッグとは、サントネージュ魔道士界の有名人であり、魔道士たちの畏怖の対象であった。過去や未来を見通すことや、空中浮遊などもできるという。彼が呪いをかけた人間のうち、死んだ人間が5人、彼に命乞いをして助かった人間は無数にいる。

「なんでも、デルマーボッグ様は、今回のユラリアの寇略がずっと前から分かっていたそうだ。ごく親しい者たちに見せた『未来記』には、それが書かれていたらしい」

「では、なぜそれを国王に伝えなかったのだ?」

「滅びるものは滅びるに任せるのがいいというのがあの方のお考えなのだ。俗世の戦乱など、あの方の関心には無いのだな。ある意味では、国王などの上に立つお方だから」

「すごいお方だ。我々も、修行すれば、そのような高みに行けるだろうか」

「ああ、苦しい修行に耐えればな」

「あるいは、あのお方が前前からおっしゃっていた地上の天国が、この戦乱の後に来るのかもしれない。我々の指導者であるあのお方が俗世の支配者にもなれば、地上はそのままで天国になるというあの予言が実現されるかもしれないな」

「いや、アルト・ナルシス様を国王としてもいいのではないか。ナルシス様はデルマーボック師を崇拝しておられるからこそ、我々もナルシス様に従っている。ナルシス様が俗権の支配者、デルマーボック師が精神界の支配者でいいのではないか?」

「いずれにしても、我々の活躍する時代が目の前にあるのは確かだ」

「その通りだ」

この会話はこの二人の精神を高揚させる効果があったらしく、彼らは夜を徹して歩き続け、どうやらグエンたちとの距離をかなり縮めたようであった。





第十章 タイラス宮廷



サントネージュ王国崩壊の知らせはサントネージュに置いてある間者(スパイ)を通じて、急報としてタイラスに届いていた。そして、王子と王女が宮廷を脱出した後、行方が知れなくなっていることも。

タイラス王妃エメラルドは、夫である国王エドモントに王子と王女の救出を頼んだが、国王は良い返事をしなかった。というのは、実はエドモントの母はユラリアの出で、ユラリア国王とは血縁関係にあったからである。サントネージュがユラリアに占領されることで、タイラスとして損になるということはない。むしろ、国王エドモントが危惧していたのは、義理の甥と姪、つまりダイヤ王子とサファイア姫がタイラス宮廷に来たらどうするかということであった。

「一番いいのは、彼らをつかまえて、ユラリアに引き渡すことでしょう」

宰相のケアンゴームが言った。年の頃は40代後半だろうか、銀髪で褐色の顔色をした体格のいい男だ。短い顎髭が堂々としていて、宰相よりは将軍のタイプだが、無表情で、物腰は穏やかである。しかし、その眼の奥には、何か得体の知れないものがある。美男と言ってもいい中年男だが、どことなくいかがわしい雰囲気を持った男だ。

「しかし、そうすると、お妃さまは王をお許しにならないでしょうから、困りましたな。どうなさいます?」

「まあ、妃がどう言おうと、国王はわしだから、わしの好きなようにやるまでだが、正直言って、妃に泣かれるのもいやだ。どうしたものか」

エドモントは色白のでっぷり肥った顔に困惑の色を浮かべる。

「宮廷に来る前に、途中で殺しますか?」

「ふむ、しかし、それも乱暴だな。まだ相手は子供だし」

「やはり、捕まえて、ユラリアに送るのが一番でしょう。処置はユラリアに任せれば、王の責任ではありませんから」

「ふむ、やはりそうするべきだろうな」

「まあ、国境地帯はユラリアの兵が固めているでしょうから、そこをわずかな人数の逃亡者が突破できるとも思えません。今の段階では、これは考える必要もないことでしょう」

「そうだな。それより、モーリオンの件はどうなった」

「はい、すべて順調です。モーリオン様はランジュ公爵の養女ということにしてあります。いつでも、そちらへいらっしゃれば、お会いになることはできます」

「ランジュ公爵があの女に手を出したりはしないだろうな?」

「それは無理でしょう。なにしろ、70歳の老人ですから」

「できれば、宮廷に入れて、毎日会えるようにしたいものだが、妃には知られたくはないのでな」

「まあ、会えない間が、また恋の薬味というもので」

「まったく、いくつになっても、新しい美しい女というものは、男をわくわくさせるものだわい」

「さようですか」

「お前も、澄ました顔はしているが、やることはやっているだろう」

「まあ、適度に」

「また、美しい女を見つけたら、知らせるのだぞ」

「はい、それはもちろんです」





紙魚氏という人のブログ記事(主に読書日記)のひとつだが、ある意味、私が理想としているのが、この尾崎士郎の「新説三国志」である。たぶん、小学校高学年くらいに読んだと思う。なぜか家にあったのである。下のブログではけなされているが、私はそのふざけぶりが面白かった。
何しろ、イギリス軍歌の「(ロングロングウェイトゥ)チッペラリー」が古代中国の世界の中に出てくる(行進する兵士たちが歌う)のである。最近はユーチューブで調べられるから、それで調べて、その歌自体も好きになった。私はイギリスは世界最大の悪党国家だと思うが、イギリス文化は好きなのである。その皮肉なユーモアセンスが好きだ。
で、日本に足りないのは、そうした皮肉さであると思う。だから、社会批判も政治批判も面白くない。

ちなみに尾崎士郎は「人生劇場」で有名だが、「大作家」ではない。

(以下引用)

2018年2月28日 (水)
尾崎士郎の「三国志」
新説三国志/尾崎士郎(河出新書,1955)
 尾崎士郎といえば、戦前・戦中・戦後にわたって活躍した大作家で、『人生劇場』で一世を風靡したことで知られる。東京と愛知県の二箇所に記念館があり、文豪と言ってもいいだろう。
 この本は古本でたまたま見つけて買ったもので、新書版、200ページ程度の薄い本。三国志を語るにしては妙に短い。もともと「三国志」ものに興味があったから買ったので、尾崎士郎の名前で買ったのではない。
 とはいえ、何しろ大作家の書く三国志だから、どんなすごい作品かと思ったら…。
 これがとんでもないシロモノで、怪作としか言いようがない。どこからつっこんでいいのかわからない。

 登場人物のセリフが完全に現代語だとか、地の文に「テーブル」とか「ジャック・ナイフ」とかやたらカタカナ語が出てくるとか、それどころかセリフにまで「オー・ケー」とか「サンキュー・ベリー・マッチ」とか英語が混じる。
 しかしそれはまだいい。基本設定に矛盾があるのは困る。
 例えば、諸葛亮が初登場する時の年齢設定がおかしいとか。「まだ三十には間があると思われる年配であるのに、細長い顔に粗髭をのばし」などと書いてあるが、この時はまだ物語の序盤、何進が暗殺される直前なのである。とすれば189年、孔明はまだ8歳のはず。いくらなんでも年齢が違いすぎ。
 何よりも、ストーリーが何だかおかしい。肝心なところをはしょりまくっていて、話のつながりがめちゃくちゃになっている。黄巾の乱の後、劉備は督郵をぶん殴って行方をくらまし、いつの間にか流浪の軍団の長となって荊州に出現する。その間、呂布も出てこないし官渡の戦いもない。劉備と曹操とのからみも一切なし。
 そして話は、劉備が諸葛亮を軍師に迎え、新野に曹操軍を迎え撃つ直前で唐突に中断する。作者のやる気がなくなったのかと思ってしまうような中途半端な終わり方。
 まったく、なんじゃこれは、と言いたくなる小説だった。ある意味すごい。

 実は尾崎士郎の小説、他には1冊も読んだことがない。まさかこんな変な話ばかり書いていたわけではないだろう、と思いたい。

Shinsetsusangokushi

タイガー!  タイガー! 8章(1) 2017/10/11 (Wed)

第八章 森の中(1)



グエンたちの一行がキダムの村を出てから三日が経った。キダムの村で荷車を買い、それを農耕馬に引かせて子供たちはそれに載せることにしたので旅ははかどるようになり、キダムからは100ピロほど東に来ていた。ここから先は森林地帯になり、民家はほとんど無くなるが、途中の村で食料を仕入れていたので特に食い物の心配は無い。ただ、国境をどこから越えるかが問題だが、それはその場の様子を見て決めればいいとフォックスは考えていた。

「ずいぶんはかどりましたね。あと少しで大森林です。大森林を抜ければエーデル川があり、その先がタイラス、その南がトゥーランです」

「タイラスの王妃さまが、私たちの叔母様ね?」

「そうです。エメラルド様とおっしゃって、とてもおきれいな方ですよ。まだ、とてもお若くて、おそらく22,3歳くらいだと思います。嫁がれたのがおととしですから、今頃は可愛い赤ちゃんをお産みになっているかも」

「赤ちゃん、見てみたいわ。可愛いでしょうね」

荷車の上のソフィにフォックスが馬上から話しかけると、さすがに女同士で話がはずむが、男の子のダンはすっかり退屈している。

「あーあ、早くタイラスにつかないかな。ぼく、車に乗るのはすっかり飽きちゃったよ」

宮廷を脱出した時の緊迫感も今は無い。それに、グエンという強い味方ができたもので、誰もが安心しきっていた。



大森林が目の前に見えた。樅の木がほとんどで、その森がどこまで続くのか、低い位置からではその範囲もわからない。その途中にエーデル川が流れる峡谷があるはずで、そこがサントネージュと他国の国境になっている。

針葉樹の爽やかな匂いがする。頭上を覆う木陰からは絶えず小鳥の声がする。木の葉を通して太陽の光が下に落ち、下を行く一行の顔をまだらにする。



彼らが通っているのは、古い街道である。今でも通商のために使われていて、馬車が通れる程度の幅はあるが、道の上には枯れ葉が深く積もっている。

グエンは馬を歩ませながら、物思いにふけっていた。ある思いが頭の中をぐるぐると回っている。それは、なぜ自分の頭はこのようになっているのか、ということと、なぜ自分の記憶は無いのか、ということ。一言で言えば、「自分は何者か」ということである。考えても答えの出ない問題を考えるのは空しいことだと分かってはいる。しかし、考えずにはいられない。

(俺の体は、通常の男より相当にたくましいらしい。また、体力も人並み以上で、剣をふるう技能もかなりある。ということは、やはり俺はこの世界のどこかで生れ、育ったが、ある時に記憶を失って、あの野原に倒れていたのだろうか。あの野原は、しかし、まったく見覚えは無かった。どこか別の場所で記憶を失わされて、あそこまで運ばれたのか。誰が、何のために? 俺は剣を扱うのに何一つ苦労はしなかった。考える前に体が動いていたという感じだ。そういう面での記憶、つまり体の記憶はあるようだ。それに、言葉を話すのは難しいが、他人の言葉は苦もなく理解できる。ならば、やはり俺はこの国の人間なのか? しかし、こんな頭の人間はほかにはいるまい。なぜか、そういう確信のようなものが俺にはある。俺は自分のこの頭に気づいた時、恐ろしい気持ちになった。それは、これが本来の自分の頭ではないと知っているからだろう。しかし、これが仮面などでないのも確かだ。それは何度も確かめた。無理にこの顔を剝がしても、他の顔など出てこないだろう。俺はいったいどうすればいい。この頭のままでこの世界に生きていくしかないのか?)



「ねえ、グエン、何を考えているの?」

フォックスが言った。

「俺は、何者か、という、ことだ」

たどたどしい口調だが、やっと文章になる会話ができるようにはなっている。

「どこかの宮廷に仕えていたんだと思うわ。あなたのあの剣の腕は、超一流の剣士だった。そういう剣士がどこの宮廷にも仕えていないということはありえない、と思う」

「あのう……」

控え目にソフィが口をはさんだ。彼女にしては珍しい行動である。

「なに? ソフィ」

他人のいない所でも、なるべくサファイアとは言わずにソフィと呼ぶようにしている。

「宮廷のお抱え剣士や騎士ではなく、もしかしたら王様だったのかも」

「えっ?」

この言葉はフォックスには盲点だった。何しろ、まっぱだかで出現した、虎の頭の男である。それがどこかの王様だという想像はまったく思い浮かばなかったのだ。

「ま、まさか。……でも、言われてみれば、どことなく威厳があるような……。でも、まさか」

「グエンは王さまだったの?」

ダンが遠慮なく聞いた。

「分から、ない。覚えて、いない」

「そのうち、虎の頭をした人がどこかから失踪したという噂でもないか、尋ねてみましょう。でも、それは私たちがタイラスについてからね」



突然、馬が足を止め、後ずさりをした。不安そうな嘶きを上げる。

「何か、前の方にいるわ」

フォックスが言った。

「確かめて、来る」

グエンは馬の腹を軽く踵で蹴って歩ませた。

森の中は静まり返り、鳥の声も今はやんでいた。


タイガー! タイガー! 8章(2) 2017/10/11 (Wed)

第八章 森の中(2)

馬を走らせていたグエンは前方に黒い影を見つけて馬を止めた。その影は四体。

「お前らは、何者だ」

グエンは静かに聞いた。

「そういうお前の名を聞こう」

影のような黒衣の男たちの一人が低い声で言った。

「俺の名は、どうでも、いい。お前たちは、俺に、用が、あるのか」

「ああ、お前の連れている二人の子供を寄こしてもらおう」

「あれは、俺の、子供だ」

「嘘をつけ。あれがサントネージュの姫と王子だということは分かっている」

「馬鹿馬鹿しい。俺たちは、ただの、旅人だ」

「どこへ行く」

「お前らに、言う、必要など、ない」

「ならば、力づくであの子供たちをいただこう」

男の腕が鋭く動くと同時に、グエンの乗った馬の首に短刀が刺さった。

「くそっ」

鞍から跳躍すると、グエンは巨体を翻して地上に降り立った。馬がその背後で倒れる。

四人の男たちはそれぞれの手に鞭を持っている。その鞭の先端に小さな金属の輝きがあるのをグエンの鋭い目は見て取った。

(毒針付きの鞭か。少々厄介だ。)

グエンは腰の剣を抜いて油断無く4人に向かい合った。

その時、背後にかすかな叫び声がしたのを、グエンの常人離れした聴覚は聞きつけた。

(しまった!)

グエンは身を翻し、駈け出した。

(あの4人を相手にしている間に、他の連中がフォックスたちを襲ったのだ。うかつだった!)



グエンは疾走した。馬よりも速い。

あっと言う間に、背後に残してきたフォックスたちのところに着いた。フォックスは剣を抜いて、子供たちをかばいながら、敵らしい男たちに向っている。敵の身なりは通常の庶民の服装だが、それぞれに短剣を持っている。その数は5人。

「ああ、グエン、助けて!」

フォックスの言葉にうなずくと、グエンは敵に襲いかかった。

5人を倒すのに、数秒もかからない。

だが、その間に、道の前方にいた黒衣の男たちが馬を走らせてやってきた。

「下がっていろ! 危険な連中だ」

グエンはフォックスや子供たちに声をかけて、黒衣の男たちの方へ走り出した。

先頭にいた男が、馬上から鞭をふるう。その鞭を剣で切ろうとするが、鞭はただ剣に捲きつくだけだ。その間に他の男からの鞭がグエンを襲う。

「くそっ!」

グエンは身をかわしながら、その鞭を手でつかみ、相手を馬から引き落とす。

フォックスがこちらに駆けてくるのが見えた。

「来るな!」

グエンは叫んで、巨体を跳躍させ、2マートルほども飛び上がると、そのたくましい右足で馬上の敵を蹴り落とした。そして、同時にその馬に乗る。

相手と同じ高さにいれば、敵の武器の有利さもいくらかは無くなる。

残りの二人を剣で斬るのはあっという間だった。

地上には、引きずり落とされた男が立ち上がりながら呆然としている。蹴り落とされた方は、座りこんでいる。



「我々は、サントネージュ宮廷の者です。王女と王子をお守りするために追ってきたのです」

男は必死の表情でそう言った。

「どう、思う?」

グエンはフォックスの方を振り返って聞いた。

「嘘だと思います。先ほど、彼らは私の名を尋ねようともせず、子供たちを奪い取ろうとしました。それに、宮廷でこの者たちの顔を見たことはありません」

「い、いや、確かに我々は宮廷の者ではなく、臣下のそのまた家臣ですから、フェードラ様が我々の顔をお知りにならないのは当然です。我々は実は、アルト・ナルシス様の家臣でございます」

「アルト・ナルシス様の?」

「はい。ナルシス様は、お考えがあって、今はユラリアの二人の王子に仕えておりますが、実は、機を見てサントネージュを再興するお考えなのです。そして、もちろん、王位にはご自分がではなく、サファイア様かダイヤ様をおつけになろうとお考えなので、お二方をご自分の元で隠しながら保護なさるおつもりなのです」

フォックスは考え込んだ。

「アルト・ナルシス、は……第三、王位継承者、だったな?」

グエンが言った。

「はい」

「どう、する? お前たちが、望むなら、……俺は、ここで、別れても、いいが」

「いやだ! ぼくはグエンとタイラスに行く。アルト・ナルシスなんてウソつきだ! あいつはお父様を守りもせずに敵に降参しちゃったじゃないか」

ダンが目に涙を溜めて叫んだ。

「そうね。アルトには何かの考えがあるのかもしれないけど、敵に占領されている都に戻るのは危険すぎると私も思います」

ソフィの言葉に、フォックスもうなずく。

「いきなり子供たちを連れ去ろうとしたあなたたちのやり方を見ても、あなたたちの言葉が真実のようには思えません。しかし、それが真実ならば、あなた方を殺すわけにもいかないでしょうから、あなたたちの命は助けてあげます。アルト・ナルシス様には、サントネージュを再興してからお二方を迎えに来るようにお伝えください」

黒衣の男たちは顔を見合せて、仕方なさそうにうなずく。

「はっ。すべてを信じていただけなかったのは、私たちの手落ちです。そのうちお迎えにあがります」



男たちが去ると、ソフィとダンは再び馬車の上に戻った。

グエンの馬は先ほど殺されたが、黒衣の男たちの乗っていた馬がまだ近くにいたので、そのうち2頭は馬車につけ、1頭にグエンが乗る。これまで馬車を引かせてきた農耕馬は解放した。

しかし、思わぬ手間で、すぐに野宿の準備をしなければならない時間帯になっている。

少し広い場所まで進んで、一行は野宿の用意をし、夕食を食べた。あたりはすっかり闇に包まれ、森の木々の上には宝石を撒き散らしたような星空が広がっている。









創作の参考にするためには優れた作品よりダメな作品を見て、どこがなぜダメなのか研究するのがいい、という話があり、私も、そうだろうな、と思っている。もっとも、本当に才能のある創作家は、他人の作品を参考にするまでもなく、自分が作りたいものが最初からあるのではないか、とも思う。
というのは前置きで、食事のお供に見るアニメが払底しているので、前にも見た「Sクラス娘」を(研究目的も兼ねて)再視聴しているのだが、本当にダメアニメだなあ、と思う。素人が西洋中世風異世界アニメを見て作ったような作品で、その描写のひとひとつが、見ているこっちが恥ずかしくなる。つまり、どこを取ってもどこかで見たようなデティールなのである。特にギャグは、まったく笑えないし、アニメとしても、場面のあちこち不具合だらけ(たとえば、バトルの最中に味方同士が口喧嘩をして、相手はそれをそのまま待っているなど、不合理の極みである。)で、「とりあえず、それらしく作ってみました」という感じしかしない。
唯一の長所は、真の主人公と思われるベルグリフという中年男の視覚的造形も、性格も非常に好ましいことで、彼が出る場面以外はほとんど糞である。彼の何がいいのかというと、彼は冒険初期の段階で失敗して片足を無くした男で、その経験からか非常に謙虚で誠実な性格である、ということで、実は剣の達人なのに、それをまったく誇らない、というところが視聴者に好感を持たせるからだ。
で、ひとつ疑問なのが、このアニメは監督と総監督がいるのだが、どちらも私の知らない名前だ。アニメの出来のひどさから見ると、どちらもほとんど素人なのではないか、と思うが、なぜ監督と総監督がいるのだろうか、というのが疑問なのである。
この、総監督を置くというやり方は失敗のもとだと思う。「スパイ×ファミリー」がその例で、一期で素晴らしいアニメを作った人物を二期では総監督に棚上げして、他の人物が監督を務めたが、これが一期の「見えないフレーバー」がまったく無い作品になったのである。どこがどうと口では説明できない良さが一期にはあったのだが、二期では視聴者にはその欠如(これはOPアニメだけで明白に分かる。一期のOPは、誰も言わないが、テレビアニメ史上最高に見事なものであった。)が敏感に伝わって、視聴率的に惨敗となったわけである。
つまり、毎度言うが「渡河の途中で馬を替えてはいけない」という鉄則を知らない馬鹿がこの世には多いということである。
同じジブリスタッフが作っても、宮崎駿が監督するのと他の者が監督をするのでは天と地の相違があるのは、そういう「見えない(口で説明できない)フレーバー」の違いである。

あまりに漠然とした言い方なので、具体的に言えば、作品の細部の細部までこだわる完璧主義が、そのフレーバーの正体だろう。監督が、自分の頭の中にあるものを完全に作品の上に表現されるまで妥協しない、という徹底性である。


海外の批評だが、「天空の城ラピュタ」の批評としてほぼ完璧だろう。

(以下引用)

● 「宮崎の強みが全て出た作品で、恐らく彼の最高傑作」 男性 ベルギー ブリュッセル
  評価:★★★★★★★★★★

 この映画のサウンドトラックを聴いていると、映画のシーンがありありと目に浮かび、熱いものがこみ上げてくる。ドライアイ気味の僕にはありがたい。「ラピュタ」はこれまでに2回観たけれど、むしろ、まだ2回「しか」観ていないことを恥じるべきだと感じる。

 宮崎の作品は全て鑑賞したが、どれもが傑作だった(ナウシカは除く。素晴らしい原作漫画に比べれば、今いちの出来だと感じた。)ただ、時として彼の長所は短所にもなり得るようだ。高畑監督の傑作「火垂るの墓」に比べれば、「千と千尋」はあまりにポジティブで素朴過ぎるように思えるし、「もののけ姫」は倫理観が強く出過ぎているように感じる。でも、「ラピュタ」にそんな短所は見当たらない。「ラピュタ」のストーリーには、宮崎のストーリーテラーとしての能力がフルに発揮されている。もちろん彼の倫理観も出てはいるけれど、それが超自然的な世界観やユーモアの中にうまく編み込まれていて、どんな年齢の人も完璧に楽しめるようになっている。
 
 メインキャラクターの描かれ方は非の打ち所がない。恐れや疑問を抱きつつ、困難に打ち勝っていく彼らの個性が見事に表現されている。ストーリーが展開するペースも完璧だ。と言うより、これはもはやブラックホールのようなものだ。自分の存在全体が物語に引き込まれてしまうような抗いがたい力すら感じた。
 
 物語は、まずほのかにミステリアスな香りが漂うアクションとして幕が開ける。少女が空から落ちて行ったところでオープニングクレジットのスタートだ。ここで大いなるミステリーの一端が垣間見える。もちろん、ここで全容が明かされることはなく、物語の再開だ。ここから無数のアクションシーン、穏やかで美しいシーンの数々を経て、忘れがたいクライマックスへ突き進む。
 
 憂鬱な旅路の果てで、パッと広がった清々しい朝日が昇る地平線を目にしたようなクライマックスだ。これまでは苦しい日々だったし、まだ前途は多難かもしれない。でも、今、この景色に出会えたことは素直に喜ぼうじゃないかという、希望と憂いを両方含んだ実に美しいエンディングだった。僕は頭の中にまぶしい光が差し込んだような気がした。もしエンディングクレジットが流れている段階まで観ても、まだ目が乾いていて気持ちになんの変化もなかったとしたら、すぐ信頼できるセラピストに診てもらったほうがいい。
 
 アニメーションの出来に関しては、最近の宮崎作品のほうが圧倒的に優れているのは確かだ。しかし、だからといって、「ラピュタ」が傑作であることに何の疑いも抱くことはない。あなたも、もしこの「ラピュタ」が1986年に作られた作品であることをほんの一瞬でも思い出してもらえたら、宮崎駿が200年に一度訪れる彗星のように稀な天才であるという結論にたどり着く以外にないはずだ。同じようなことを言う人は他にもいるだろう。ただ、僕にとっては、そのシンプルな事実をもっとも強く実感できたのが、この「ラピュタ」を観たときだった。
 
 この作品を観ないまま亡くなる人のことが気の毒でならない。それはとても大きな欠落を抱えたまま棺に入るということなんだから。

タイガー! タイガー! 7章 2017/10/10 (Tue)


第七章 アルト・ナルシス



ナルシス卿と呼ばれた男が謁見室から出て来ると、控えの間にいた黒衣の男が頭を下げた。

「御用はお済みで?」

「ああ」

大股に歩くナルシスの後から、黒衣の男はちょこちょこと歩いていく。ナルシスという男もそう大柄ではないが、黒衣の男ははっきりと小柄である。その黒衣は、この国では聖職者が主に着るものだが、魔道士、あるいは魔法使いと呼ばれる者たちも着る。

魔道士や魔法使いは職業ではなく、生き方である。通常の人間には無い能力を追い求める生き方のことだ。

普通の人間の持たない不思議な力を持つ彼らは、世間の人間からは恐れられ、敬遠され、時には仕事を依頼された。その仕事は、失せ物の捜索、病気の治療、結婚や仕事の吉凶判断から憎む相手への呪いの依頼まである。

また、中には広い知識と異能力のゆえに権力者に重用される者もいる。この男もその一人で、サクリフィシスと言う。

彼の仕えているアルト・ナルシスはサントネージュ国王アメジストの兄、故アノンの息子で、この国の第四王位継承者である。いや、第三王位継承者の王妃ルビーが死んだ今は、第三王位継承者だ。第一順位のダイヤと第二順位のサファイアが行方不明の現在、ユラリア国の支配下にあるサントネージュの国王に彼が指名される可能性は高い。

「まだサファイアたちの行方は知れないか?」

アルトの質問にサクリフィシスは答える。

「村村に置いてある間者の連絡によれば、二日前にキダムを出たのがサファイア姫とダイヤ王子であるのは間違いないようです。お付きの者のうち一人は近衛兵のフェードラ、通称フォックスと言う女です」

「あのはねっかえりか」

「もう一人は、身長が2マートルほどの大男で、顔を包帯で包んだ謎の男です」

「身長が2マートルほどというと、さて、誰がいたかな。バルバス、ケンリック、モルゲンの三人とも処刑されたはずだ。後は、2マートルまではいかないが、ウジェーヌ、マリオンくらいか。だが、この二人は俺の手下だからな」

「はい、彼らが宿舎を離れてないことは確かめてあります」

「ふむ。まあ、いずれにしても、できることならセザールの手の者たちより先に、サファィヤ姫を捕まえてくれ」

「ダイヤ王子はいかがいたします?」

「殺せ」

「はっ。殺した証拠はどうしましょうか」

「いらん。お前がそれを確認すれば、それでよい」

再び頭を下げて、サクリフィシスは歩み去った。



アルトは自分の居室に戻った。この屋敷は彼の家で、そこを彼はオパール総督府として提供しているのである。そのうちもっともいい部屋二つはセザール王子とグレゴリオ王子の居室にしてある。そして自分は客間の一つで暮らしているのである。

ベッドの横の小さなテーブルに置いてある真鍮製の鈴を鳴らして小間使いを呼ぶと、茶を持ってくるように命じる。

縦長の窓が開いていて、そこから初夏の風が入ってくる。

庭の木の梢を渡ってくる爽やかな匂いの風だ。白い薄織のカーテンが揺れている。日の光がレースを抜けて絨毯の上に落ち、縞模様を作る。

「さて、これからあの邪魔者たちをどうするか。……セザールとグレゴリオを毒殺するのは容易だが、かと言って、あいつらが引きつれてきた軍勢はすぐには掌握はできないだろう。さてさて、難しい問題だが、それを考えるのも面白い。次の一手はどうする? アルト・ナルシスよ」

お茶を持ってきた小間使いは、主人が笑みを浮かべて窓の外を眺めているのを見て、その邪魔をしないようにお茶をテーブルの上に置いて静かに退室した。



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