初回に6点のビハインドを背負いながら、最後は8対7のルーズベルトゲームとなるまで追いつめたのは立派である。と同時に、これが今のDeNAの限界だ、ということを球団関係者は噛みしめてほしい。来季は、せっかくここまでたどり着いたものを無にしないように、現状に満足することなく、その上を目指してほしいものだ。さもないと現状維持どころか、再び暗黒横浜に逆戻りということもありうる。
なお、私は最初からCSはボーナスステージでしかないと思っており、日本一とか何とかいうことにたいして意義を認めていない。(これは広島のCS勝利をおとしめるものではない。自分の手に入らないからそれをけなすという「すっぱいブドウ」的な発言ではないのだ。)意義があるのは、あくまでリーグ優勝である。各チームがリーグでの優勝を目指してしのぎを削るのがプロ野球の根幹だ。
個人成績もチーム成績を優先してこそ意味がある。個人の業績を讃えるために一つの試合を犠牲にすることなど、けっしてあってはならないことだ。私は三浦やその他の引退選手が嫌いだから引退セレモニーに反対しているわけではない。引退セレモニーは真剣勝負の場とは別の場で行えばいいのである。真剣勝負でなくなったら、野球は終わりだろう。もちろん、それは野球が本質的には「ボールを遊ぼう(プレイボール)」の掛け声で始まる楽しい遊びであることと並立することなのだ。
何はともあれ、通常のペナントレースが終わってからも、ここまで野球を楽しむことができたのは嬉しかった。ただ、広島とのクライマックスシリーズの全国放映が無かったのは返す返す残念だ。テレビ局各社には怒りすら覚える。なぜ、こういう貴重なイベントを無視する番組編成をしたのか。おそらく電通などの「指令」が背後にあるテレビ局やスポーツ新聞の「野球軽視」「野球無視」路線の一環だと思う(要するにサッカーを「売る」ためだっただろう。)が、だからこそテレビ人気は低下し、スポーツ新聞は売れなくなっているのである。馬鹿どもだ。金の卵を産むニワトリを潰す馬鹿。「野球では視聴率は取れない」とか何とか言っている馬鹿がどこのテレビ局にもいるのだろうが、他の番組で視聴率が取れたのか。要するに、「ネットやスマホがあるから、昔ほどテレビを見ない」だけの話だ。
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<広・D>1回1死一、二塁、右越え3ランを放ったエルドレッドを迎える広島ナイン Photo By スポニチ |
セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ(S)第4戦が15日、マツダスタジアムで行われ、初回に6点を挙げた広島がDeNAの猛追を振り切って逃げ切り勝ち。アドバンテージを含め対戦成績を4勝1敗とし、25年ぶりとなる日本シリーズ進出を決めた。
打線が初回から爆発した。先頭の田中が四球で出塁、菊池の犠打、丸の四球で1死一、二塁としてから新井が左前へ先制打。鈴木も左前適時打で続くと、さらに1死一、二塁からエルドレッドが右翼席への3ラン。さらに田中の右前適時打などこの回打者11人、4連打を含む6得点でDeNA先発の今永をKO。試合の主導権を握った。
2、3回にそれぞれ2点を失いリードは2点に。3回に菊地、5回に田中が適時打を放って再び引き離したものの、6回に2点を奪われると、7回にはロペスにソロ本塁打を許して1点差まで詰め寄られた。それでも、救援陣のリレーで1点を守りきった。
6点のビハインドを背負ったDeNAは、2回に敵失を絡めて2得点、3回には左手薬指骨折で強行出場している梶谷の2ランで2点差に。5回までに再び4点をリードされながらも、ロペスの本塁打などで1点差まで追い詰めたが、あと一歩及ばなかった。ファーストSでは2位巨人を退け、ファイナルSでも5割未満でCSに出場した球団として初めて勝利を挙げるなど快進撃を続けたDeNAの今季が幕を閉じた。 【試合速報】
ラミレス新監督が率いたDeNAの2016年シーズンが終わった。勝率5割には届かなかったものの初めてCSに進出。ファイナルまでコマを進めたが優勝した広島に1勝4敗で敗れた。野球評論家の西本聖氏が今季最終戦となった第4戦と今季の戦いぶりを振り返った。
-初回の6失点が痛かった
西本氏 エルドレッドに3ランを打たれて0-5。その後の6点目が一番痛かったと思う。「今日負けたら終わり」という状況の中で最善を尽くすとすれば5点目を失ったところで先発の今永を思いきって代えてもよかったのではないか。ベンチも冷静さを失ってしまったというか、6点目をどう防ぐかを考えるべきだった。
-結果的に7-8の1点差負け
西本氏 3回の7点目にしてもそう。2回から藤岡を登板させたが、新井に1安打を許したものの良い投球をした。3回も続投かと思ったが3人目の砂田を登板させて1点を奪われた。藤岡をそのまま投げさせてもよかったのではないか。次の1点をどう防ぐか。ベンチは今の状況、つまり「負けたら終わり」ということを考えないといけない。しかし初回の大量失点でベンチが冷静さを失ってしまった。後手後手に回ってしまった感じがした。悔いの残る戦いだったのではないか。
-5回には今シリーズで10打数9安打されていた田中広輔と勝負して再び適時打を許した。同じ打者に打たれすぎた
西本氏 第1戦で3安打された。その反省が生かされていない。短期決戦ではいかにラッキーボーイを止めるかが大事。逆に広島は筒香を16打数1安打、打率わずか6分3厘に抑えた。バッテリーの差が出たというか「ベンチは何をしていたの?」と言わざるをえない。
-今季のDeNAを振り返って
西本氏 前任の中畑監督が「強いチームを作っていこう」と4年間でチームを少しずつ変えた。去年は球宴前は1位だったしチームの変化は見えたと思う。そしてラミレス監督が就任。「思い切ったことをしたい」と新人捕手の戸柱を使ったり、オープン戦ではベンチから捕手にサインを出したり。内角をどんどん使うなど今までにないもの、足りなかったものを少しずつ変えていこうという意思が選手に伝わったと思う。
-今季の躍進がきっかけとなりDeNAは強いチームになっていけるか
西本氏 今年、初めてCSに行って、選手の気持ちが変わると思う。練習から集中してやればレベルが上がっていく。そして、今までの野球とどう変わったのか。勝つためには何が必要なのか、個々が見つめ直す必要がある。来年につなげられる今日の負けであってほしい。