マスコミとして追究するべきところは、なぜ鬼束ちひろがこのような発言をするに至ったかの理由だろう。当然、ヤクザをバックに芸能界に生息している和田アキコや島田紳助を「殺したい」と思う無数の芸能人の魂の叫びがここに表れたと推定できる。ところが、そこに踏み込まず、「暴言」をネットで発言したら法的に刑罰の対象になる、というのではネットの可能性を縮小させることにしかならない。いや、もちろん、現マスコミとしてはそれが狙いなのだろうが。
念のために言うが、私は鬼束ちひろについては一つも知らない人間である。歌も聞いたこともない。
(以下引用)
鬼束ちひろさんのTwitterでの危険な発言、法的な責任は生じるか
弁護士ドットコム 7月19日(木)14時58分配信
危険なツイートの法的な責任は |
歌手の鬼束ちひろさんがTwitter上で発言した過激な内容が、波紋を呼んだことは記憶に新しい。鬼束さんは6月22日に自身のアカウントを取得しツイートを開始すると、「いぃぃ!えぇぇぇぇええええ!!!」などのテンションの高い発言に加え、「あ~和田アキコ殺してえ。」「なんとか紳助も殺してえ。」など、有名人を名指しで攻撃する危険なツイートを繰り返した。
一連の発言は、ソーシャルメディアを中心に多くの人の関心を集め、アカウント取得からわずか数時間で、フォロワー数は1万人を突破した(7月17日現在、フォロワー数は13万人弱まで拡大している)。しかし、和田さんらに関する過激な発言内容は決して評価されるものではなく、事態を重くみた鬼束さんの所属事務所は当該ツイートを削除するとともにアカウントを非公開とし、翌日23日には、オフィシャルサイト上で鬼束さん本人による直筆の謝罪文も掲載した。
一方、名指しで攻撃された和田さんは、ラジオ番組内で「とにかく変わった人だから放っておこうね。ここ(ラジオ)で言ったからもうおしまい」と事件について触れるも、深く言及することはせず、特に関わるつもりがない姿勢を見せている。
しかし、もし和田さんが鬼束さんの発言を不服とし、脅迫あるいは名誉毀損で訴えたいと思った場合、法的に争える余地はあるのだろうか。誹謗中傷などによるトラブルに詳しい秋山亘弁護士に、民事上、刑事上それぞれの観点から聞いた。
●民事上の観点から
「本件のような事案では、仮に和田さんが鬼束さんを訴えようとした場合、民事上の不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求をすることが可能と考えられます。たとえTwitterというインターネット上の発言であっても、ある人物を特定した上で『殺してえ』という発言をすることは、社会的に許容される発言の範囲を大きく逸脱しておりますし、名指しで発言された本人においても、このような不当な発言をされたことを受忍しなければならない理由はありません。なお請求額の明示はできませんが、さほど大きくないことが予想されます。」
「インターネットは不特定多数の人が見る『公的な広場』という側面がありますので、上記のような発言を一方的にされた場合には、その人の名誉感情を著しく害することは明らかです。よって、本件については、名誉感情の侵害による民事上の損害賠償請求は可能と考えられます。」
●刑事上の観点から (脅迫罪)
「刑事上の脅迫罪や名誉毀損罪に問えるかというと、そこまでは言えないように考えられます。まず、脅迫罪における『脅迫』とは、人の生命、身体、名誉等に対する害悪を告知することですが、本件の発言については、あくまでもTwitterという公開されたインターネット上のもので、また、鬼束さんという著名人が身分を明かした上での発言ですので、このような発言をする方もまた受け止める方も実際に『殺される危険がある』とは感じないのが通常でしょう。本件のような場合における『殺してえ』の真意は、『実際に殺したい』という意味ではなく、『それだけ和田さんのことが気に入らない』と捉えられるからです。」
「しかし、Twitter上の発言であっても、受け止める方において『実際に殺される危険がある』と受け取られるような態様で発言をすれば、発言者において実際には殺すつもりなど全くなくても脅迫罪に問われる可能性は十分にありますので、注意が必要です。本件は鬼束さんと和田さんという著名人の間の発言ですので、むしろ例外的な場合と考えた方がよいでしょう。」
●刑事上の観点から(名誉毀損罪)
「次に、名誉毀損罪における『名誉毀損』とは、『不特定多数の人に対し、事実を摘示することによって、人の社会的評価を低下させる行為』を言います。本件については、『殺してえ』」という鬼束さんの心情(実際の真意は前記のとおり)を述べたに過ぎませんので、和田さんの『社会的評価を低下させるような事実』を示したものではありません。したがって、本件のような事件であっても、刑事上の脅迫罪や名誉毀損罪には問うことはできないと考えられます。」
芸能人自らがインターネット上で発信するメッセージは、「生の声」という面白さがある一方、マネージャーや事務所が管理をしてない場合には、こうした事件が起きる可能性を意識しなくてはならない。行き過ぎた発言や行為がないよう、事務所と芸能人との間であらかじめ、ソーシャルメディアの使い方や発言内容を決めておくなどの対策が求められそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
秋山 亘 弁護士 (あきやま・とおる)
佐久間・秋山法律事務所
民事事件全般(企業法務、不動産事件、労働問題、各種損害賠償請求事件等)及び刑事事件を中心に業務を行っている。日弁連人権擁護委員会第5部会(精神的自由)委員、日弁連報道と人権に関する調査・研究特別部会員
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