忘れないうちにメモ。
映画「ナイン」の中で枢機卿がグイドに言う言葉
「想像力は神の庭です」
これは名文句。その後に「そこに悪魔を住まわせてはいけない」みたいなことを言うが、これはキリスト教徒としての言葉で、我々非キリスト教徒には無関係な話。
キリスト教か否かに関わらず、「想像力は神の庭である」という考えを持つのはいいことだ。つまり、すべての創造は想像力から始まるのだから、想像力は神の庭だと言える。
なお、映画「ナイン」はフェリーニの「8 1/2」をミュージカル化したブロードウェイ作品の映画化である。駄作ではないが、あまり面白くもない。何より、キャストが良くない。役者はみな熱演だが、そもそも大半がイタリア人に見えない。グイドの悩みも観客の共感をまったく呼ばない甘ったれにしか見えない。音楽もあまり良くない。時々挿入される1960年代カンツォーネの良さが際立つだけに、現代の音楽がまるで魅力が無いのが丸分かりである。
ダニエル・ディ・ルイスは熱演だが、イタリア人にはまったく見えない。ジュディ・デンチのフランス風発音、イタリア風発音は見事だが、これもフランス女にはまったく見えない。ニコール・キッドマンもまたイタリアのスター女優にはまったく見えない。唯一イタリア人に見えたのは、グイドの妻の役をした女優で、これはフェリーニの奥さんのジュリエッタ・マシーナを下敷きにした役柄だが、実際、ジュリエッタ・マシーナの面影もある。もちろん、遥かに美人だが。
映画としての終わり方も良くない。「8 1/2」のラストの、あの何とも言えない高揚感が、この映画にはまったく無い。人生はお祭りだ、という雰囲気で終わらなければ、この作品の存在意義は無いだろう。甘ったれの映画監督の、作品が作れない、という悩みなどに観客をつき合わせ、それでも満足を与えるのは、あのラストがあってのものである。この「ナイン」という作品を通して「グイド、グイド、グイド」がうるさくてうんざりした、という観客は多かったと思う。
なお、グイドの姓「コンティーニ」はヴィスコンティとフェリーニのミックスだろう。